54: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/18(日) 20:12:32.44 ID:X9ltvPdj0
善子「侑……大丈夫──……なわけないわよね……。ごめんなさい……」
侑「…………」
善子「ご飯食べてる……? 親御さんが心配してたわよ……」
侑「…………」
善子「……侑……」
侑「…………出てこないんです」
善子「え……?」
侑「すごく……悲しいはずなのに……。……涙が、出てこないんです」
善子「…………」
侑「私……おかしくなっちゃったのかな……」
善子「……侑……っ……」
ヨハネ博士が、私の手をぎゅっと握る。
善子「……ごめんなさい……」
侑「……謝らないでください……博士……。……ヨハネ博士は、何も悪くないんですから」
善子「…………っ……」
きっと、ヨハネ博士も辛いよね。自分が旅に送り出した子たちが……こんなことになって。
ヨハネ博士は言葉を探していたけど──結局見つからなかったのか唇を結ぶ。
善子「……そうだ」
ヨハネ博士は自分のカバンからボールを6つ出して、ベッドの上に並べる。
善子「…………侑、貴方の手持ちとタマゴよ。みんな元気になったって」
侑「……そっか……よかった」
善子「……あと……かすみが貴方に会いたがってたわ」
侑「……かすみちゃん……元気になったんですね」
善子「えぇ……まだ頭に包帯巻いてるけどね。……無理にとは言わないけど、今病院の中庭にいると思うから……侑が嫌じゃなかったら、会いに行ってあげて」
侑「……はい」
善子「……それじゃあ、お大事にね」
ヨハネ博士はそう残して、病室から静かに立ち去った。
侑「…………」
私は少し悩んだけど……別に他にやることがあるわけでもないし、と思い……ベッドから出て上着を羽織る。
ボールベルトを巻こうと手に持とうとすると──手が震えて、うまく持てなかった。
侑「…………あはは……ダメだ……」
私はベルトを着けるのを諦め、手持ちのボールをバッグに詰め──片側だけ肩に掛けるようにして、自分の病室を後にした。
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