53: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/18(日) 20:11:43.19 ID:X9ltvPdj0
■Chapter051 『──かすみの願い』 【SIDE Yu】
──あの戦いのあと、私たちがどうなったのかはよく覚えていない。
気付いたら病院で治療を受けていて、気付いたら病院のベッドで寝ていた。
幸い、私の傷はそこまで酷くなかったが、ポケモンたちは酷く傷ついていたため、治療室で過ごしているそうだ。
かすみちゃんは……どうしているだろう。壊れてしまったリナちゃんは……彼方さんや遥ちゃんは無事だろうか……。
みんなの顔を見に行った方がいいのはわかっているけど──今は何もする気が起きなかった。
ただ、日がな一日、ベッドの上でただ窓の外をボーっと眺めながら過ごして……。
日に三度、規則正しく出てくる食事は……取ったところでほとんど吐いてしまうため、1口2口食べて後は全部残す。
でも……不思議と空腹は感じなかった。まるで、空腹というものを心が忘れてしまったかのようだった。
入院してすぐにお父さんとお母さんが持ってきてくれた果物も……食欲がなくて、全く手を付けていない。
看護師さんにはすごく心配されるけど、言っていることがあまり頭に入ってこず、全てが右から左へ通り抜けていく。
夜は消灯時間を過ぎても全然眠くならなかった。
ただ、ベッドで身を起こしたまま──真っ暗な病室でただ窓の外の月を眺めていた。
たまに意識が遠のいて──気絶したように眠り、起きたらただボーっとベッドの上で過ごす。それの繰り返し。
そんな風に過ごして──もう5日が経とうとしていた。
……そういえば、3日目くらいに、ポケモンリーグの理事長──すなわち、元四天王の海未さんが私の病室を訪れた。
事情を訊きたいとのことで。
私は訊かれた質問に対してただ淡々と答えた。
カーテンクリフに行ったこと。
せつ菜ちゃんが、ボロボロになった千歌さんを連れ去ったこと。
果林さんと愛ちゃんが悪い人だったこと。
しずくちゃんが付いて行ってしまったこと。
──歩夢が、行ってしまったこと……。
普段の私だったら、あの海未さんが目の前にいるとなれば、大はしゃぎだったと思う。
だけど……何も感じなかった。なんの感情も、湧いてこなかった。
──自分の中で大切な何かが壊れてしまったんだと、どこか俯瞰気味に自分を見つめている私がいた。
🎹 🎹 🎹
──コンコン。病室がノックされる。
侑「…………」
善子『──侑……私、善子だけど……入るわよ』
今日も変わらずぼんやりと窓の外を眺めていると、病室にヨハネ博士が顔を出す。
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