418: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/30(金) 14:12:51.11 ID:loIPccok0
テッカグヤが身を振るいながら、砕いた岩壁をこちらに向かって雪崩のように崩してくる。
彼方「“テレキネシス”!!」
「ムシャァ〜〜」
大量の岩を“テレキネシス”で浮かせて、そのまま細い天然の通路をダッシュ。
姫乃「鬱陶しい……!!」
わたしがとにかく逃げ回りながら、攻撃を捌くことしかしないからか、姫乃ちゃんの苛立ちが見て取れる。
ただ、こうして細い道に逃げてきた判断は間違っていなかったらしく、強引に破壊しながら追ってきているものの、障害物を破壊しながら進んでいる分、テッカグヤのスピードは落ちているし、何より推進力に両腕を回しているため、出来る攻撃の種類が減っている。
これなら、逃げながら捌くことも難しくない。……だけど、問題もあって……。
彼方「ま、また分かれ道……! こ、こっち……!」
エマ「う、うん……!」
峡谷の細道は、複雑に枝分かれしていて、天然の迷路のようになっていた。
彼方「え、えっと〜……さっきは右に曲がったから、方角は〜……! もう〜! ゲートはどっち〜!?」
とにかく、エマちゃんをこの世界から逃がしてあげたいけど、こんな分かれ道だらけで見晴らしの悪い場所じゃ、方向感覚も無茶苦茶になるし、ゲートがどっちだったのかもわからなくなってくる。
それにずっと走ってると──
彼方「はぁ……! はぁ……!」
息も切れてくる。彼方ちゃん、走り回るのはあんまり得意じゃないんだよ〜……!
エマ「……彼方ちゃん」
彼方「な、なに〜!?」
エマ「ゲートがある場所まで行けばいいんだよね?」
彼方「そ、そうだけど〜……!」
エマ「じゃあ、こっち……!」
彼方「え……!?」
さっきまで私が引いていたはずの手を、逆にエマちゃんに引かれる。
エマちゃんは彼方ちゃんの手を引き始めると、ほとんど迷う素振りも見せずに分かれ道を進む。
エマ「……こっち……!」
彼方「え、エマちゃん、道分かるの……!?」
エマ「わたし、自然の中なら絶対に迷わない自信があるから!」
彼方「お、おお……!」
さすが山育ち……! 大自然で育った人はそういう感覚が根本から違うのかもしれない。
峡谷にある天然の迷路は奥まって行けば行くほど、どんどん複雑に折れ曲がっていき、次第に姫乃ちゃんのテッカグヤを引き離していく。
陰に隠れる形で、視界からテッカグヤが見えなくなったところで、エマちゃんが立ち止まる。
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