383: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/28(水) 11:33:18.49 ID:bMcrfVdQ0
エマ「わたし……あの後、何度も考えたの……。……でも、やっぱり……果林ちゃんが心の底から、みんなに酷いことをしようとしてるなんて、どうしても思えないの……」
彼方「エマちゃん……」
エマ「……果林ちゃんは……誰かのために背負いこんで、自分一人が悪い人になって……みんなを守るために無理してるんじゃないかって……」
彼方「……」
エマちゃんの言うことは……あながち的外れというわけでもなかった。
果林ちゃんはストイックだし、目的のために手段を選ばないけど……仲間想いな人だ。
今は道を違えてしまったけど……わたしも果林ちゃんには何度も救われた。
果林ちゃんは果林ちゃんなりに……自分の世界を救うために必死なだけなんだ。それくらいは理解している。
エマ「前に……果林ちゃんが悪い人なのか……彼方ちゃんに聞いたよね……」
彼方「……うん」
エマ「そのとき彼方ちゃんは……『どの立場から見るかによる』って言ったよね。果林ちゃんを悪い人だとは……言わなかった」
確かに、わたしはそう答えた。
エマ「……あの言葉を聞いて……彼方ちゃんも……本当は果林ちゃんと戦いたくないんじゃないかなって……」
彼方「それは……」
それは……そうだ。……わたしだって、かつての仲間──うぅん、家族……かな──と戦いたいなんて思わない。
エマ「もし、彼方ちゃんが今でもわたしと同じように……少しでも、果林ちゃんと戦わない方法を考えてくれてるなら……。……わたしも果林ちゃんのところに連れていって。……わたしが果林ちゃんに、もうこんなことはやめようってお話しするから……」
わたしは返答に困る。
果林ちゃんにとって……エマちゃんが特別な相手だったのはそうなのかもしれない……。
とはいえ、今になってエマちゃんの言葉を聞いたところで、止まってくれるのか……。
エマ「彼方ちゃん……お願い……」
彼方「う、うーん……」
エマちゃんの視線から逃げるように目を逸らしたとき、ふと──エマちゃんのお部屋に石が置いてあることに気付く。
いや、正確には何度かこの部屋は訪れているから、あるのは知っていたんだけど……。
彼方「……あれ……あの石……」
よく見ると──どこかで見たことがあるものだった。
エマ「石……? ……あ、えっとね……それは果林ちゃんがずっと前にくれた石なの……御守りだって」
彼方「……思い出した」
あの石は確か──果林ちゃんが持っていた石と同じものだ。
彼方「果林ちゃんの……故郷の石……」
エマ「え、そうなの……?」
──もう、なくなってしまった……果林ちゃんの故郷の石。
そんな大切なものを……これから滅ぼす世界に置いていくかな……?
彼方「…………」
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