361: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/27(火) 11:54:06.25 ID:0yMsBTVK0
リナ『あってるけど、たぶんヨハネ博士の考えてる範疇の話だと間違ってる』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「……。……世界の中で起こるレベルのエントロピー増大じゃないと……?」
鞠莉「それだと、エネルギー保存則と矛盾しないかしら?」
リナ『しない。そもそもエネルギー保存則は各々の世界レベルじゃなくて、全宇宙……うぅん、もっと広い範囲でやり取りされるエネルギーの総量が一定って話』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「あー……なるほど。虚数領域にエネルギーが落ち込むとか、そういう方向性ね……。でも、なんでそんなことが目に見える形で起こるのよ?」
リナ『わかりやすくいうと、私たちの世界自体の経年劣化』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「経年劣化……? つまり、長く続きすぎた世界だから、委縮してるってこと?」
リナ『うん。簡単に言うとそういうこと……というか、そもそも世界は基本的にはビッグバンによるインフレーションから始まって、そこからどんどんエネルギーが外に漏れ出ていく。問題はそれが急速に進行してること』 || ╹ᇫ╹ ||
鞠莉「なんで急速な進行が起きてるの……?」
リナ『世界とウルトラスペースの境界面に穴が空いて、世界のエネルギーが流出するから』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「なんで穴が空くのよ」
リナ『世界とウルトラスペースの境界面を形作ってるのが、そもそもエネルギーで出来てるからかな。あまりに世界が長く続きすぎると境界面のエネルギー層がその形質を保てなくなる』 || ╹ᇫ╹ ||
鞠莉「Ozone holeみたいな……?」
リナ『イメージとしては近い。違いとしては、オゾンは惑星内部で作られるけど、エネルギーは新しく生成されない。熱力学の第一法則があるから』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「進行を防ぐ方法は?」
リナ『流出してるし、新しく作り出せないんだから、流出量より多くのエネルギーを外から持ってくるしかない』 || ╹ᇫ╹ ||
善子「それが他の世界を滅ぼすってことなの……?」
リナ『正確には他の世界からエネルギーを流入させるには、滅ぼすのが一番早いって話かな』 || ╹ᇫ╹ ||
かすみ「だぁぁぁーーーー!!! もう無理!!! もう限界です!!! もっとわかりやすい言葉で話してくださいよ!?」
かすみちゃんがついにキレた。
とはいえ、私も全然わからないし……もう少し噛み砕いた説明が欲しいかも……。
善子「あらかた話が終わったら、わかりやすく説明するつもりだったんだけど……マリー」
鞠莉「OK. 」
鞠莉さんは突然、自分の荷物の中から“ふうせん”を取り出して、携帯式のエアポンプで膨らませ始める。
鞠莉「まずこれが世界だと思って頂戴」
かすみ「は、はい……」
善子「んで、この中に存在している空気がエネルギーよ」
鞠莉「ただ、この“ふうせん”の中の空気はずっとこのまま放置しておくとどうなりマースか?」
経験則から考えるなら……。
侑「ちょっとずつ空気が抜けてしぼんでいく……?」
鞠莉「イエース! そのとーりデース!」
善子「それが経年劣化による世界の萎縮の仕組みって話ね」
果南「でもそれって、どんな世界にも起こることなんじゃないの?」
善子「ええ。だから、問題はこの世界に──」
ヨハネ博士は机の上に置いてあったペンを持って──それをぶっ刺した。
善子「穴が空いてるのが問題」
もちろん、ペンが刺さった“ふうせん”は音を立てて破裂してしまった。
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