25: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/16(金) 18:00:17.78 ID:eLOLjL7n0
果林さんは興奮して「フーフー」と息を荒げるせつ菜ちゃんを後ろから抱きすくめて、
果林「私は、この子に力をあげただけ……選んだのはこの子。……そして、選ばせたのは──貴方じゃない」
千歌「……え」
果林「可哀想なせつ菜……貴方にとって、すごくすごく大切なバトルだったのに……。チャンピオンはそんなバトルをただの一撃で終わらせた。圧倒的な力でねじ伏せて、あざ笑うかのように。『特別』な技で、『特別』なポケモンで……」
千歌「そ、それは……」
果林「だから、あげたの──『特別』を。──ウルトラビーストを」
千歌「そん、な……」
じゃあ、せつ菜ちゃんがこうなっちゃったのは……私の、せい……?
果林「せつ菜……貴方の力を見せて? 『特別』になった貴方は──チャンピオンにも負けないわ」
せつ菜「はい……。約束は守ります。私は、チャンピオンを討ちます……!」
千歌「わ、私……」
私は、もしかして……とんでもないことをしてしまったんじゃないか?
私がせつ菜ちゃんを傷つけてしまった。
私はチャンピオンで、みんなにバトルの楽しさを知って欲しくて、表舞台に出ていたのに──バトルで彼女を傷つけたんだ。
一番バトルの楽しさを伝えなくちゃいけない──この地方のチャンピオンなのに。
せつ菜「“れんぞくぎり”!!!」
「────」
連続の斬撃は、衝撃波となり、石で出来た祭壇の床を豆腐のように斬り裂きながら迫る。
棒立ちの私に向かって。
「ワォンッ!!!!」
ルガルガンは、そんな私の服にたてがみの岩を引っかけ、無理やり背中に乗せ、後方に向かって飛び出した。
直後──私の居た場所は、まるでみじん切りにでもしたかのように、石畳の表面が細切れになる。
千歌「ルガルガン……!」
「ワォンッ!!!!」
ダメだ……!! 落ち込んでる場合じゃない……!!
彼方さんたちもあんな様子なのに、私が立ち尽くしてる場合じゃ──
せつ菜「“しんくうは”!!」
「────」
「ギャンッ!!!?」
千歌「っ!!?」
逃げるルガルガンを真空の刃が斬り裂き──私は放り出されて、祭壇の岩畳の上を転がる。
千歌「ぅ……ぐぅ…………っ……」
落下の衝撃で、一瞬息が出来ずに呻き声をあげる。
痛みを堪えながら、顔を上げると──
「ワ、ワォン…」
ルガルガンが倒れていた。
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