162: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/21(水) 03:41:17.84 ID:/nLmInIK0
しずく「ありがとうございます、歩夢さん♡ では、私の言うとおりにしてください♡」
歩夢「うん」
しずく「まず、モンスターボールを全てベルトから外してください♡」
歩夢「……わかった」
私はボールベルトから、モンスターボールを全て外して、足元に置く。
それと同時に──ボールたちがカタカタと震えだす。
歩夢「みんな……大人しくしてて」
私がそう言うと、揺れるボールたちは大人しくなる。
しずく「それでは、そのまま──崖を背にして一歩ずつ後ろに下がりましょう♡」
歩夢「……うん」
私はしずくちゃんを見ながら、一歩ずつ後ろへと下がる。
一歩ずつ一歩ずつ、足元の地面を確認しながら下がっていくと──足元に地面が確認できない場所にたどり着く。
つまり──私の後ろは、もう崖だ。
崖下から風を感じて、背筋がぞくりとしする。気付けば脚が勝手に震えだしていた。
しずく「……そうだ、歩夢さん」
歩夢「……な、なに……?」
震える声で返事をすると、
しずく「その髪飾りも──預かりますよ。外してください」
しずくちゃんは──侑ちゃんに貰った髪飾りを外すように要求してきた。
侑ちゃんの気持ちの籠もった──ローダンセの花飾りを……。
歩夢「これは……」
しずく「私を……信じてくれるんじゃないんですか?」
歩夢「………………。…………わかった」
私はゆっくりと──髪飾りを外す。
そして、それをしずくちゃんに手渡す。
しずく「ありがとうございます♡」
歩夢「……しずくちゃん」
しずく「はい?」
歩夢「……絶対に、侑ちゃんやかすみちゃんが助けに来てくれるはずだから……絶対に……絶対に一緒に帰ろうね」
しずく「…………」
歩夢「それまで……預けるね……。きっと、私の分まで……侑ちゃんの想いが、しずくちゃんを守ってくれるはずだから……だから──」
──ドンッ。
しずくちゃんが──私の肩を押した。
身体が後ろに傾き──支えるものが何もない私の身体は──背中から、崖下に向かって落下を始める。
最後に見たしずくちゃんの顔は──少しだけ悲しそうに見えた。
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