12: ◆Kg/mN/l4wC1M[saga]
2022/11/25(金) 00:10:57.92 ID:YjhaJr8i0
新緑に染まった木々たちが海風で揺れて、さらさらと音を立てている。
窓辺に寄ると、音のざわめきに合わせたみたいに湿った潮のにおいがした。
あの日からいくつかの季節が過ぎて、今はもうすぐ夏が始まろうとしていた。
だけど、私の心の奥は、まるで失くしものが見つからないみたいに、ぽっかりと空いたままだった。
この劇場では、これまで色々なことがあった。
数え切れないくらいたくさんの公演があって、その数と同じだけ、アイドル一人一人に物語があった。
アイドルのみんなは、アイドルとしての活動の日々の中でたくさん悩んだり迷ったりする。
それでもみんなは、最後には自分だけの答えを見つけて、公演の舞台の上へと駆け出していく。
そんなかけがえのない日々が積み重なるたびに、ステージの上のみんなの輝きは大きくなっていった。
私は、この劇場で成長していくみんなを見るのが好きだったし、そんなみんなの側にいられて私自身もちょっぴり誇らしかった。
だけど……私は本当にみんなの力になれてるのかな?
そんな不安が私の胸の奥に張り付いて、ずっと離れなかった。
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