942: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/14(水) 12:23:08.31 ID:A5BOh9Vw0
千歌さんは今度こそ踵を返して、洞窟から駆け出して行く。
彼女が去ったあとの洞窟内をぼんやりと見回すと、
「ゲ、ン…」
ゲンガーが倒れていた。
「ムドー…」
エアームドも力なく地に伏せ、
「フ、ゥ…」
ほのおタイプが得意なはずのスターミーもコアを点滅させ、
「ド、サイ…」
溶岩さえ耐える、硬い岩の皮膚を持つドサイドンも丸焦げにされ、
「ワ、ォン…」
同じほのおタイプのはずのウインディも、力尽きて倒れていた。
せつ菜「……なに……いま、の……」
私は──思い上がっていた。
もう少しで手が届くと思っていたのは、ただの勘違いだった。
私のポケモンたちは──たった一撃で全滅してしまった。
千歌さんは、あんな技を隠していた、あんな特別な、技を……。
せつ菜「あ、……あはは、あははははははっ……」
笑いが込み上げてきた。
笑いと一緒に──涙も。
せつ菜「あはは、あははははははっ……千歌さんは、本気じゃなかったんだ……ずっと私なんか相手に、本気なんて出してなかったんだ……」
本当はいつでも一撃で終わらせられる技を持ってたんだ。そんな──『特別』を持っていたんだ。
私にはまだ──チャンピオンなんて遠かったんだ。
ただ、負けただけなら……いつもだったら、どうすれば勝てるかを考えていた。
だけど……今回は、そう思えなかった。そんな風に、考えられなかった。
せつ菜「なんで……っ……。なんで……その技なんですか……っ……。なんで……バクフーンなんですか……っ……」
ずっと、言わないようにしていた言葉が……勝手に溢れ出してきた。
せつ菜「なんで……選ばれた貴方が……選ばれた技で……選ばれたポケモンで……──選ばれなかった私から、全てを奪うんですか……っ!!」
もう言葉が止まらなかった。
せつ菜「私だって、選ばれたかった……っ!!! 博士からポケモン図鑑を貰って、最初のパートナーを貰って、旅に出たかった……!! 私だって、そうしたかった……そうありたかった……」
──結局。
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