892: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/12(月) 01:30:34.96 ID:ropYqdR40
菜々父「ある日……エレキッドが進化したんだ」
菜々「……エレブーに……?」
菜々父「そうだ。ただ姿が変わっただけだと思っていた私が、いつものようにエレブーにケチャップを持って行ったら──あいつは暴れ出した」
菜々「え……」
菜々父「これは後で知ったことだが……エレブーは赤いものを見ると、興奮して暴れ出す習性があるそうだ。……暴れるエレブーは、どんなに声を掛けても聞く耳を持たず、周囲に無差別に“ほうでん”を繰り返し、家は瞬く間に炎に包まれた」
菜々「……そんな」
菜々父「燃える家から命からがら逃げだす中、私の母親は、私を庇って“ほうでん”を受けた。……あのときの母さんの叫び声は、今も覚えている」
菜々「…………」
菜々父「その後、私も気を失ったらしい。父さんがどうにか、私と母さんを近くの病院まで運んで……次に目が覚めたのは病院のベッドの上だった。母さんは……酷い火傷と感電によって、包帯でぐるぐる巻きのままベッドに寝かされ──数日後に帰らぬ人になったよ」
お父さんは、私の方に振り返る。
菜々父「……何度自分を呪ったか。あのとき、もっと知識があれば。あのとき、エレキッドを助けなければ。あのとき……ポケモンと、関わらなければ、と」
お父さんは深く息を吐きながら、
菜々父「人とポケモンは……根本から違う生き物なんだと……」
そう、言葉にした。
菜々「おとう……さん……」
お父さんがそんな風にポケモンと触れ合っていたなんて、知らなかった。
ただ襲われて、ポケモンを嫌いになってしまっただけだと思っていた。
菜々父「……私は、ポケモンを知らないまま怖がっているかい。菜々」
菜々「それは……」
私は思わず言葉に詰まる。お父さんの苦しみは……ポケモンから受けた痛みは……きっと計り知れないものだったのだろう。
それも助けたポケモンに、家族を奪われるなんて……。
菜々「でも……そういうポケモンばかりじゃない……ポケモンと触れ合って、わかり合っていけば、どうやって接すればいいかもわかるはずだよ……!」
菜々父「今日のバンギラスのように、人を傷つけるポケモンもいる」
菜々「そうだけど……! でも、人を守るポケモンたちだっているよ……!」
私は今日みんなを守って見せたドサイドンのボールを手に持ち、前に突き出す。
この子が多くの人の命を守ったんだ。それはお父さんだって見ていたはず。
でも、お父さんはそんなことを意にも介していないかのように、質問を投げかけてきた。
菜々父「なら、聞こう。菜々。そのポケモンたちと一緒に過ごす間に、菜々は掠り傷一つ負わなかったか?」
菜々「……え?」
菜々父「菜々の大切な仲間たちは──私の大切な娘に掠り傷一つ負わせなかったか?」
菜々「え……と……」
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