872: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/11(日) 18:58:25.43 ID:6zYh2+nI0
■Chapter044 『急転』 【SIDE Setsuna】
菜々「……やはり、雨ですね」
マンションのエントランスから空を見上げると、灰色の空から雨が降り注いでいた。
不幸中の幸いとも言えるのは、昨日の午後のような、記録的な土砂降りではないことくらいだろうか。
昨日は大雨のせいで、公共交通機関にも乱れが生じるほどだったそうだ。
夕方ごろに一度、晴れこそしたものの……また明け方に掛けて天気が崩れ、雨になっている。
ただ、ここは整備の行き届いたローズシティ。
普通の雨くらいなら、舗装された道路を歩くのも、そこまで苦ではない。
私は真っ赤な傘を差して、仕事へと向かう。
🎙 🎙 🎙
本日の仕事は、数週間後に控えた、ビジネス発表会のための打ち合わせだそうだ。
会議を行うビジネスタワーで入館手続きを済ませ中に入ると、ローズシティ内の様々な企業の人たちの姿が目に入る。
件のビジネス発表会というのは、このローズシティの中でもかなり大きなビジネスショウの一つで、ローズ中の会社が集うイベントとなる。
真姫さんはローズシティにある、かなりの数の企業に影響を持っているニシキノ家のご令嬢ということもあり、顔を出さないわけにはいかない。
そして、そんな真姫さんのスケジュール管理と業務補佐をするのは、秘書である私の役目だ。
菜々「真姫さんは……もう会議室の方に行ってるのかな」
エントランスホール内には姿が見えないので、私は会議室の方へと足を運ぶ。
それにしても、本日の会議は急に決まったものだと言うのに人が多い。
やはり──噂のスーパーモデルの飛び入り参加が大きいのだろう。
一応、昨日のうちに件の人物については調べておいた。
──アサカ・果林。4年ほど前に突如モデル界に現れ、その抜群のプロポーションと人の目を引くカリスマ性で、そちらの界隈ではかなり話題になっていたそうだ。
私は……家庭の方針でそういう浮ついたものには触れさせてもらえなかったので、あまり知らなかったけど……。
今ではファッション業界や化粧品会社などから、多くの仕事を請け、広告塔としても有名のようだ。
そんな彼女とお近づきになっておきたい企業はいくらでもある。
だから、このような急なスケジュールでも、多くの企業から人が出張ってきているのだろう。
エントランスホールから廊下を抜け、エレベーターホールに差し掛かったとき、
菜々「……あ」
ちょうど、エレベーターに乗り込むお父さんの後ろ姿がちらっと見えた。
──お父さんも、今日の会議にいるんだ……。
お父さんもニシキノグループの関連企業の人間だ。いてもおかしくはないけど……。
父の姿を見ると、少しだけ緊張してしまう。
菜々「……落ち着きなさい、菜々。……私はあくまで秘書として、仕事をこなすだけです」
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