854: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/10(土) 16:13:20.42 ID:hRdoaDre0
視界の端に居た歩夢さんが──濁流に飛び込んでくる姿が見えた。
──歩夢さん、来ちゃ、ダメです……!!
叫ぼうとするが、濁流に呑まれながら声を発することなど出来るはずもなく、私は流されていく。
溺れないように、必死に顔を水面に出そうとするが、激しい濁流の中では自由が全く効かず、私の視界は──気付けば全てが濁った水の中で、回転していた。
上も下も右も左もわからない。
洗濯機の中にでも放り込まれたような気分だった。
もはや水面がどっちかすらわからない。
──私……死んじゃうのかな。
ウルトラビーストに襲われたとかじゃなくて……まさか、川で溺れて死んじゃうなんて……。
情けないな……。
だんだん、抗う気力もなくなってきて……ただ流されていく私の腕を──何かが掴んで引っ張りあげるような感覚がした。
しずく「──ぷはっ……! げほっ! げほっ!」
歩夢「しずくちゃん、平気!?」
「シャーボ!!!」
私を引っ張りあげたのは──歩夢さんだった。サスケさんが私の腕に頭側を絡みつかせ、尻尾側は歩夢さんの腕に絡みつき、私を引っ張っていた。
そのまま、サスケさんを伝って、歩夢さんが手を伸ばし、私の腕を掴む。
歩夢さんに引き寄せられた状態で、濁流の中辛うじて顔だけを水面から出したような状態のまま、流されている。
しずく「あ、あゆむ……さん……っ……」
歩夢「サスケ……! 絶対、私から離れちゃダメだよ……!」
「シャーボッ!!!」
歩夢「タマザラシ……! 頑張って、岸まで……!」
「タマァァ…!!」
歩夢さんがタマザラシに掴まって泳いでいることに気付く。
そうだ私も……!
しずく「ジメレオン、出てきて……!」
「ジメッ!!」
私もジメレオンに掴まり、歩夢さんのタマザラシと力を合わせて、岸に向かおうとする──が、
歩夢「な、流れが……速すぎて……っ」
しずく「二人とも岸まで行くのは無理です……! ジメレオン、タマザラシと協力して、歩夢さんだけでも……!」
「ジ、ジメ…」
歩夢「そんなの絶対にダメ……!!」
しずく「ですが……っ」
歩夢さんは私を助けるために、飛び込んできたのだ。
私が落ちたりしなければ、歩夢さんが危険な目に遭うなんてことなかった。
しずく「どちらかしか助からないなら……歩夢さんが──」
歩夢「どっちが助かるかなんて考えないでっ!」
しずく「!」
歩夢「タマザラシ、お願い……!!」
「タマァァァ…!!」
そのとき──タマザラシの体が眩く光り始めた。
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