845: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/10(土) 02:52:18.74 ID:hRdoaDre0
もう、耳にタコが出来るくらいこの話は聞いた。あれはただの気まぐれというか……私もここに来たばかりで──計画のために、面倒な騒ぎが起こるのが嫌だったから、手を出しただけ。
でも……それがきっかけでエマにはいたく気に入られ、その後、彼女はなにかと私の世話を焼いてくれるようになった。
ヤンチャムたちも……その中で貰ったポケモンだ。
エマ「それに、御守りの石もくれたし……今も大切にしてるんだよ?」
果林「まだ持ってたのね……」
エマ「当たり前だよ! 果林ちゃんからの贈り物だもん! 一生大切にするに決まってるよ!」
一生の宝物だなんて大袈裟な……。
あれは……ただ私の故郷で拾っただけの石なのに。
エマにとっては……本当にただの石ころのはずなのに……。
果林「そういえば……前から聞きたかったんだけど……」
エマ「?」
果林「どうして、ヤンチャムをくれたの?」
ある日突然ヤンチャムを渡され──次会ったときにも……またその次会ったときにもと、あれよあれよとヤンチャムの数は増えていった。
あまりに毎回ヤンチャムを渡されるから、さすがに6匹目で止めたんだけど……。
エマ「だって果林ちゃん、ヤンチャムが好きみたいだったから」
果林「え……? そんなことがわかる機会……あったかしら……?」
エマ「あったよ〜! 果林ちゃん、いっつもテレビでヤンチャムが出てくると、じーっと見てたもん!」
果林「そ、そうかしら……」
こっちに関しては逆に心当たりがあった。
私は……ここに来るまで、ヤンチャムというポケモンを見たことがなかった。
初めて見たときから、あの白と黒のボディに丸っこいフォルムが妙に私のツボを突いてきて── 一目惚れだったと思う。
エマはそれを見逃さなかったということらしい。
本当にエマは、私のことをよく見ている。……ずっと、ずっと見ていてくれた。
果林「……ねぇ、エマ」
エマ「なにかな?」
果林「もし……もしね、私がここを離れなくちゃいけないって言ったら……どうする……?」
エマ「……」
私の言葉を聞いて、エマはスプーンを持った手を止める。そして、
エマ「……やっぱり、果林ちゃん……いなくなっちゃうんだね」
そう続ける。
エマ「果林ちゃん……ここを出ていこうとしてるんだよね」
果林「……気付いてたの?」
エマ「なんとなく……そうなのかなって」
果林「……そう」
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