835: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/09(金) 12:41:05.26 ID:9oar5n900
菜々「ただ……そのとき私を助けてくれたポケモントレーナーの人たちを見て……ああ、なんてかっこいいんだろう。私もあんな風にかっこよくて、強くて……誰かを守れる人になりたい……そう強く思ったことだけは覚えてます」
真姫「それはすごく立派なことよ。私はこの街のジムリーダーとして……貴方みたいな人にトレーナーになって欲しいわ」
菜々「あはは……ありがとうございます。……でも、ダメなんです。……私は、ポケモンを持っちゃいけない人間なので……ポケモンと関わっちゃいけない人間なんです……」
真姫「…………」
菜々「……あ……もう、こんな時間だ……。……帰って勉強しないと……親に怒られちゃいます……」
そう言って彼女はいつものように、立ち上がって、踵を返す。
その折に、
菜々「……菜々です。……ナカガワ・菜々」
彼女はそう名乗った。
真姫「……知らない人には名乗っちゃいけないんじゃないの?」
菜々「えへへ……この街のジムリーダーなら、知ってる人みたいなものです。お話を聞いてくれて、ありがとうございました」
そしていつものように会釈をして──去って行った。
真姫「……ままならないものね」
この世界はポケモンと共存して回っている。だけれど、そんなポケモンの人智を越えたパワーに恐怖する人間は決して少なくない。
ポケモンに命を救われる人がいる中で、ポケモンによって命を落とす人もいる。
だから、ポケモンを忌避し、関わらないように生きる人がいることはわかっているし、否定する気はない。
だけど……ポケモンと関わりたくて、力を合わせたくて、強くなろうとしている子の気持ちが……捻じ曲げられてしまうのを見ているのは……心苦しかった。
ただ、親の言葉というのは……年端もいかない子供にとっては絶対と言っても差し支えないほど、大きな大きな影響力を持って降りかかってくる。
──私もそうだったから。
あのとき、凛と花陽が、私を連れだしてくれなかったら……私は今でも親の敷いたレールの上を走り続けていたのかもしれない。
……菜々は、あのとき誰からも手を取ってもらえなかった……私なんじゃないか。
そう思えて仕方がなかった。
真姫「ナカガワ……菜々……。……ナカガワ……?」
そういえば、ナカガワって名前……どこかで聞いた気が……。
🍅 🍅 🍅
真姫「……やっぱり」
私は関連企業役員の名簿を見て、一人納得していた。
ナカガワというファミリーネーム、どこかで聞いたことがあると思ったら……ニシキノ家が出資している企業の中の一つにナカガワという名前の社長が居た。
彼は優秀な人物であると共に──ポケモン嫌いなことで有名な人でもあった。
有事の際にポケモンに頼らなくてもいいように、会社の外装や外壁に、“リフレクター”や“ひかりのかべ”と似たような効果を持たせた頑強なビルを建てていて、実際にグレイブ団事変のときも、住民の避難所として重宝した。
その理由は前述したとおり、ポケモン嫌い故にポケモンに頼らなくてもポケモンからその身を守ることが出来るように、そのような設計をしたというのは、グループ内では有名な話だ。
もちろん、ただファミリーネームが同じだけという可能性もなくはないが……。
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