829: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/09(金) 12:34:24.48 ID:9oar5n900
父の声だった。
菜々「は、はい……!」
意気込んでいたところだったから、少し面食らったけど、私は慌ててドアを開く。
開いたドアの向こうに立っていた父は、私の姿を確認すると、
菜々父「私の部屋に来なさい」
それだけ言うと踵を返してしまう。
菜々「……お父さん……?」
私は言われるがままに、父の書斎へ足を運ぶ。
書斎に入ると、父は鋭い視線で私を見つめていた。
なんだか、背筋が凍るような視線だった。
……でも、今しかない。
菜々「…………あのお父さん、実は話が……」
菜々父「最近、誰かとしきりに連絡を取っているようだな、菜々」
菜々「え、あ……うん。……そのことについてなんだけど……」
菜々父「ツシマ研究所だそうだな」
菜々「……!? し、知ってたの……?」
菜々父「最近様子がおかしいと、お母さんから聞いた」
どうやら、お母さんに電話しているところを聞かれていたらしい。
頻繁に連絡を取っていたし……様子がおかしいことに気付いていたなら、不思議なことでもないかもしれない。
菜々父「ポケモンを貰って旅に出る……か」
菜々「う、うん……!」
菜々父「今すぐにでも断りの連絡を入れないといけないな……」
菜々「……え」
一気に血の気が引いた。
菜々父「……今からツシマ研究所に連絡するから、ポケギアを取ってきなさい」
菜々「え、あ……いや……」
菜々父「早くしなさい。わざわざこのために仕事を休んだのだから」
菜々「……ま、待って……わ、私……」
菜々父「早くしなさい」
菜々「……っ!」
静かな口調だった。
静かで……とても、強い口調。
有無を言わせない、そんな、口調。
菜々「……は……はい……っ……」
1002Res/2130.98 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20