8: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/10/30(日) 00:28:00.88 ID:QLy5TvuG0
善子「な、何よ……」
「ムマァ〜♪」
善子「ご主人様のこと、からかうんじゃないわよ! おやつ抜きにするわよ!」
「ムマァ〜ジ♪」
顔を顰めながら怒ると、ムウマージはご機嫌なまま、研究所内の壁に消えていった。
善子「全く……」
今日何度目かわからない溜め息を吐くと共に──
善子「……ん?」
先ほどまで自分がいた、新人用のモンスターボールと図鑑の前に、見覚えのある後ろ姿があることに気付く。
特徴的なアシンメトリーカットのショートボブの女の子。名前は──
善子「かすみ?」
かすみ「ぴゃぅ!?」
名前を呼ぶと、かすみはビクッと飛び跳ねながら、こっちに振り返る。
かすみ「こ、こんにちは〜、ヨハ子博士〜……」
善子「…………」
かすみ「…………」
走る沈黙。
善子「まさか、貴方……」
かすみ「ち、違いますぅ!! かすみん、抜け駆けなんてしようとしてませんよぉ!」
善子「はぁ……」
もともとイタズラ好きな子だというのはわかっていたけど、困ったものね。
善子「事前に説明したと思うけど、ポケモンを選ぶのは3人揃ってからよ」
かすみ「わ、わかってますよ〜。ちょっとした下見です!」
善子「なら、いいけど……」
かすみ「……って、あー!!! かすみん、忘れ物しちゃいました!! 取りに戻らないと!!」
善子「え、ちょっと……!」
言いながら、かすみは研究所を飛び出して行ってしまった。
善子「……慌ただしい子ね」
やれやれと嘆息気味に、かすみが凝視していたモンスターボールに目を向けると、しっかりボールは3つ残っている。
まあ、さすがに白昼堂々かすめ取って行ったりしないか。
肩を竦めながら、時計に目をやると──そろそろ、約束の時間が近付いてきていた。
善子「……というか、かすみ……今から家に帰って、時間に間に合うのかしら?」
なんだか、先が思いやられるなと思いながらも、私は新人トレーナーたちを待つ……。
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