7: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/10/30(日) 00:26:47.95 ID:QLy5TvuG0
数年前に勝手に飛び出してきてしまった研究所の主だ。
今でこそ、こうして独立出来たけど、当時から褒められるのはずら丸の方で、私は叱られてばかりだったもの。
……まあ、昔のことはおいといて。
善子「もしもし? マリー?」
鞠莉『チャオ〜♪ 善子、今いい?』
善子「ヨハネよ。何か用?」
鞠莉『Presentは届いたかなと思って』
善子「プレゼント……あのグレーの図鑑みたいなやつ?」
鞠莉『そうそう、それそれ』
自分で新人トレーナー向けの図鑑やら、ポケモンやらを工面するのに必死で、あまり気に掛けていなかったけど、言われてみればマリーからグレーの図鑑が送られて来ていたことを思い出す。
鞠莉『ちゃんと届いていたならよかったわ♪ ヨハネのために、グレーカラーでボディを作っておいたから♪ 好きでしょ? あの色♪』
善子「今更、図鑑を送られて来ても……データでも集めろって?」
オハラ研究所にいたとき、随分とデータ集めにあちこち奔走させられたことを思い出す。
鞠莉『そういうわけじゃないけど……あの図鑑、最新機能搭載型で──』
善子「こっちはこっちで、もう独立してるの。今更世話焼いてくれなくても結構よ」
鞠莉『む……何よ、その言い方』
善子「私はもう自分で図鑑も工面出来るし、ポケモンの手配も出来るってこと! いつまでも、子供扱いしないで! 今日は新しいトレーナーの旅立ちの日なんだから……用事、それだけならもう切るわよ」
鞠莉『全く……相変わらず、可愛くないわね……』
善子「うるさい」
鞠莉『All right, all right. あの図鑑、使わないなら千歌にでも渡しておいて』
善子「はいはい、会う機会があったらね」
全く……せっかく、気分転換しようと思っていたのに、却って気疲れしちゃったじゃない……。
口うるさい古巣の師からの連絡に眉を顰めながら、通話を切ろうとする。
鞠莉『善子』
善子「……だから、何よ」
鞠莉『頑張りなさい』
善子「……」
鞠莉『あなたはわたしのこと、あまり好きじゃないかもしれないけど……わたしはあなたのこと認めているし、応援もしているから。頑張って。それじゃあね、See you♪』
──ツーツー。ポケギアの向こうで通話が切れた音だけが流れる。
善子「……はぁ」
私は白衣にポケギアを突っ込んで溜め息を吐いた。
善子「……別にマリーのこと、好きじゃないとか……言った覚えないんだけど」
予想外な言葉のせいで、気持ちのやり場に困って視線を彷徨わせていると──
「ムマァ〜ジ♪」
ムウマージがニヤニヤしながら、私のことを見つめていた。
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