714: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/03(土) 12:07:08.41 ID:ogLreJcM0
私の手から離れて、またぴょこぴょこと岩山を奥へと跳ねていく。
少し名残惜しかったけど……なんだか、捕まえるという感じではないし、そっとしておいた方がいい気がした。
実際に、ピィがいることが確認出来てすっきりもしたし。
今度こそ、戻ろうかなと思った瞬間──遠くで大きな音がした。
歩夢「龍の咆哮……?」
さっき侑ちゃんが言っていたとおり、今はちょうど龍の咆哮の季節だ。
北側を見ると、音ノ木に向かって虹色の流星の筋が見えた。
色とりどりのメテノたちの姿だ。
「シャボ」
歩夢「ああ、うん。戻るんだったね」
改めて戻ろうとした、そのとき、
「ピィーーー!!!?」
歩夢「!?」
ピィの鳴き声が響く。
声がする方に、バッと振り返ると──
「ピ、ピィィ!!!?」
ピィが岩の突き出た崖から落ちそうになっていた。短い手で必死に崖を掴んでいる。
まさか、龍の咆哮に驚いて、バランスを崩した……!?
歩夢「あ、危ない……!?」
私は咄嗟に、ピィのもとへと駆け出して、
歩夢「ピィ……! 今助けるからね!」
「ピ、ピィィ…」
突き出した岩の上で腹ばいになって、ピィに手を伸ばす。
歩夢「おとなしくしててね……!!」
「ピィィィ…」
ピィの小さな手を掴んで、手繰り寄せる。
「ピィ…」
歩夢「もう、大丈夫だよ……」
しっかりと胸に抱き寄せる。
これで安心だ。
そう思った、瞬間──ガクンと視界が揺れた。
歩夢「っ!?」
急な浮遊感に、頭が真っ白になる。
突き出た岩が私の体重を支え切れずに──崩れた。
「シャーーボッ!!!!!」
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