576: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/11/26(土) 12:05:12.77 ID:K66c2REr0
遥「し、しずくさん……あ、頭を上げてください……」
しずく「…………」
彼方「しずくちゃん……えっと……あのね……。彼方ちゃんたちも困っちゃうというか……」
しずく「…………」
結論から言うと──私の簡易検査の結果はあまり芳しいものではなかった。
すぐさま、どうこうと言うほどのものではなかったが……ウルトラビーストが持つ、特有のエネルギーのような毒素が体の中に留まってしまっているらしく、出来る限り専門の医療施設で治療を受けて欲しいと説明を受けた。
……だから、その頼みを断るために、私を診てくれた遥さんの厚意を無下にするために、こうして頭を下げている。
しずく「……私が──私たちが旅を続けることを、許してもらえませんか……」
遥「……ど、どうしよう……お姉ちゃん……」
彼方「う、うーん……」
頭を下げ懇願する私と、困惑する彼方さんと遥さん。それを見かねてか、
穂乃果「……しずくちゃん、一度顔を上げてもらえないかな」
穂乃果さんがそう口にする。
しずく「……許可を頂けるなら」
穂乃果「……ちゃんと顔を見て話したいから、顔を上げて」
しずく「…………」
私は渋々顔を上げる。
穂乃果「……しずくちゃん、自分が何を言ってるか、わかってる?」
しずく「……わかってます」
穂乃果「しずくちゃんはいつ発作が起こってもおかしくないし……ウルトラビーストにまた襲われる可能性も高い……って言うのは、朝説明したとおりなんだけどさ」
遥「……少なくとも、しずくさんを診た人間としては……本部の医療施設に入って欲しいと思っています……」
しずく「……診ていただいたこと、治療していただいたことには感謝しています。……ですが」
私は──
しずく「……私は、かすみさんと一緒に……旅を続けたい」
本当は今日、あの場に観戦をしに行ったのは……検査の結果を受けて、専門の医療施設に入るため……かすみさんにお別れを言うためにジムに赴いていた。
だけど……かすみさんが必死に戦う姿を見て。
私と一緒に旅を続けるために、その力を示すために戦う姿を見て──自然と涙が溢れてきた。
諦めないかすみさんの姿を見て、私も簡単に諦めたくなくなってしまった。
しずく「……無茶を言っていることは承知しています。……ですが、この旅は……かすみさんと、ポケモンたちとする冒険の旅は、この一度きりしかないと思うんです……。……お願いします、私に、私たちに……時間をください」
私はただ懇願して、頭を下げる。
私が頭を下げると、再び場が静まり返る。
沈黙の中、ただひたすらに頭を下げ続けている中──沈黙を破ったのは、
千歌「……じゃあ、こうしよう、しずくちゃん」
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