268: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/11/10(木) 11:46:54.83 ID:IGCv6YWI0
歩夢「……? ……なんですか……?」
エマ「深呼吸、してみよっか♪」
歩夢「……え?」
エマ「はい、大きく息を吸って〜」
歩夢「え? えぇ?」
エマ「歩夢ちゃん、息を吸うんだよ♪ すぅ〜…………」
エマさんがお手本だと言わんばかりに、両手を大きく上に伸ばしながら、息を深く吸う。
歩夢「…………すぅー…………」
歩夢がそれに倣うように、ゆっくりと息を吸う。
エマ「……吐いて〜……ふぅ〜……」
歩夢「……ふー…………」
エマ「……ふふ♪ もう一回。吸って〜……」
歩夢「…………すぅー…………」
エマ「……吐いて〜……」
歩夢「…………ふー…………」
歩夢はそのまま、何度か深呼吸を繰り返す。
歩夢が深呼吸をするたびに──私の腕を掴むのに込められていた力が、抜けていくのがわかった。
歩夢「………………ふー…………」
エマ「ふふ♪ 深呼吸すると、気持ちが落ち着くでしょ?」
歩夢「………………はい」
エマ「しばらくここでのんびりしよっか♪ ここはすっごく空気が綺麗だから、リラックス出来ると思うよ♪」
歩夢は少し困ったような表情で私の顔を見る。エマさんがどうして、急にこんなことを言い出したのかがわからない、と思っているのかもしれない。
ただ、私はなんとなくエマさんのしたいことがわかった気がした。だから、黙って首を縦に振る。
歩夢は私の首肯を確認すると、岩に背をもたれたまま、ゆっくりと木々を見上げる。
私も釣られるように、顔を上げると──そよそよと風に揺れる木々の間から、僅かに木漏れ日が差し込んでくる。
エマ「……そのまま、目を瞑って、風と緑の匂いを感じてみて」
歩夢「……はい」
私も歩夢と同じように目を瞑る。
そよそよと吹く風に、緑の匂いが運ばれてくる。
息をするたび、美味しい空気が肺を満たして、身体の力が抜けていく気がした。
そのまましばらく目を瞑ったまま、これが森林浴か……などと思っていると、急に肩に僅かな重みを感じた。
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