202: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/11/07(月) 12:45:35.72 ID:HEs2RhQZ0
しずく「私の気のせいじゃなければ……会場の照明の位置から、どこに立てばキュウコンの毛並みが最も綺麗に輝くかを計算しながら演技をしていた……」
かすみ「え、う、うそ……?」
私も自分で演劇で舞台に立つ際に、考えることはある。自分の衣装が最も映える照明の角度。何度も他の演者と調整しながら、一番良い場所を探って行くのだが……コンテストライブの照明は、もちろんコンテスト主催側の裁量でしかない。
その癖を一瞬で見抜いて、自分たちが一番輝ける場所を探り当てていたとでも言うのだろうか。
しずく「それだけじゃない……カメラが自分たちに向いたら、一瞬でカメラに目線を向けていた……キュウコンも、果林さんも……」
一次審査も二次審査もずっと、一瞬たりとも気を抜かず、動く照明、動かない照明、自分たちを捉えるカメラ、それら全てを意識しながら、圧倒的なパフォーマンスをこなす。
そんなことが、本当に可能なのか……? どれだけの研鑽を積めば、あんなことが──
しずく「あれが、プロの世界……カリスマモデル・果林さんたちの表現……」
侮ってはいなかったつもりだ。自分も舞台に立つ一人の表現者として、アーティストとして、戦える物を持っている気がしていた。
でも、それは思い上がりだった。果林さんとキュウコンの演技は……私の表現とは比べ物にならない、遥か遠くに感じるくらいレベルが高かった。
観客1「──今、エントランスホールに果林さん、いるらしいよ!」
観客2「ホントに!? 私、アクセサリー贈りたい!」
観客1「行こう行こう!」
しずく「……!」
どうやら、今なら彼女と話が出来るらしい。
しずく「行かなきゃ……!」
かすみ「あ、しず子!?」
突き動かされるように、私はライブ会場を飛び出した。
💧 💧 💧
──エントランスホールは、人でごった返していた。
キャーキャーと響く、黄色い歓声──恐らくこの先に、果林さんがいる。
しずく「……と、通して……ください……!」
人込みの中を無理やりかき分けながら、前に進む。
普段なら、こんな強引なことは滅多にしない。でも私は、今あの人と話がしたい。
ファン1「果林さん! わたしのアクセサリー受け取ってください!」
ファン2「ち、ちょっとずるい! 私のアクセサリーを……!」
果林「待って待って、順番に……」
しずく「果林さん……!!」
果林「だから、順番に──あら……? 貴方……さっき、外で」
しずく「……!」
果林さんの視線が私に向く。チャンスだと思った。
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