295: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2024/08/07(水) 21:57:45.23 ID:A23xFse80
そう。私の“勘”が激しく打ち鳴らした警鐘も、冷静に辿れば異様なまでの士気の高さ以外で出所は今阿音が指摘した内容だ。
西住さんがこの陣地の指揮官に“なってしまった”ことは、最早やむを得ない。自身の無力さに悔いと苛立ちはあっても、周りであれ本人であれ取った選択肢そのものに目くじらを立てるのはただの八つ当たりよ。
一介の女子学生でしかない本人はともかく、周りの“大人”は止めるべきだった。……なんてことをしたり顔でほざく「専門家」は後を絶たないでしょうけど、「現場の人間」から言わせて貰えばそんなもんは無責任極まりない傍観者の結果論でしか無いわ。
この前代未聞にも程がある異常事態において何が正解かなんて、ロマさんやあの深海魚首相でもたどり着けるか怪しいものね。
何なら、私自身の“お気持ち”と倫理観というフィルターを取っ払ってみた場合、諸々の事情を鑑みればこれこそが最適解だったかもしれないぐらい。結果がついてきてしまっているから尚更に。
……だからこそ。防衛戦が“成功”しているからこそ。
そこに自分で綻びを作りかねない手を次々と打つ彼女の姿が、気にかかる。
「本当に正直な話をすると、私達をわざわざ陣地から突貫してまで救出したところから軽く疑問ではあるのよ、助けて貰った身で言うのも烏滸がましい話ではあるけどね。
………だって西住さんは、誰よりも彼女自身が“指揮官不在の集団”の脆さを知っている筈だから」
艦娘、自衛官、機動保安隊の生き残りを確保できたなら防衛戦力の大幅な増強でしょうし、それこそ指揮官を“武道を嗜んでいるだけの女子高生”から“深海棲艦退治の専門家”或いは“軍事組織の尉官”に変えられる。
そう考えると一見理解できなくはないけれど、仮に間に合わなければ、仮にそもそも追われていた人員がただの一般人でしかなければ、といったリスクは避けられない。
もしこの防衛陣地が殆ど西住さん一人によって持ちこたえていたのだとしたら、艦娘や自衛官の存在が不確定の状態で指揮官自らが救援に打って出るのは博打として分が悪すぎるように感じるわ。
まぁそこが西住さん自身の並外れた慧眼によって私達の構成を──少なくとも艦娘が含まれていることを──確信した結果だとしても、では“その後”は?
「それでも、私たちを救援したことは“防衛”を主軸で考えた場合でも無理やり理由付けができる。
だけど、阿音が指摘した二点はどうしても矛盾が出てくるわ」
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