282: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2024/07/29(月) 23:04:19.31 ID:eAQesrsX0
この諺を、遥か昔のヨーロッパで最初に口にした人が思い描いたであろうシチュエーションとは方向性が違う、その事は重々承知しているわ。
それでも私の脳裏には、“地獄への道は善意で舗装されている”という言葉が思い浮かんでいた。
(振りほどくわけにもいかないし………)
別にカマトトぶってるワケじゃない。行動に支障をきたさない範囲なら誰に何人に嫌われようがどうだっていいし、これは西住さんに対しても同様。私自身への好感度なんて彼女の生命を護ることに比べれば全くどうでもよく、向こうが私をどう思おうとも私が彼女を推し続けることに何ら支障はない。
ただ、前時代とはいえ軍艦1隻分の力を人間大まで凝縮した身体が下手に今の状態で身動きすれば、嫌われる云々の前に重大な怪我を負わせかねないというだけの話で。
損傷・艤装不足による出力の大幅な低下はあれど、故に加減が殊更難しい。ここまでになって尚人一人どころか三、四人纒めて放り投げるぐらいの膂力はまだ発揮できるのよ?
有効性はともかくとして、私を介抱する為に立ち働いてくれている人たちをバリケードに叩きつけかねないのに振りほどくなんてできるわけ無いわ。
「あー、西住さん?今言った通り私も流石に疲れてるし……それにほら、こんな姿を見られて嬉しいレディっていないと思うの。だからその、もし他に話があるならもう少し後にしてもらえると………」
「……本当にすみません。疲労困憊であることは承知してます。ただ、深海棲艦による“次”がいつ来るか正直読めないので………すぐに終わらせますし、その後速やかに休養の時間を設けますので、少しだけお時間いただけないでしょうか?」
(まぁそうなるわよね畜生……!)
一応抵抗はしてみたが、アヒルさんチームの駆る89式のごとくあっさりと躱された。
そして、“筋”は通っているのがより拒絶しづらい。“勘”が鳴らす警鐘は、最早実は本当に響いていて西住さんたちにも聞こえてるんじゃないかと錯覚するほど大きく激しくなっている。
「叢雲さん、いきなりで本当に不躾ですが、私達に──」
(…………っ)
いよいよ“本題”が始まろうとする中、諦めず逃げ口上を探し続けるが見当たらない。
万事休すかと、内心で唇を噛んだその矢先。
「───Hey、何やってんのよアンタ達!!」
救いの手は、意外な形で差し伸べられた。
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