7: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 00:35:55.83 ID:Sev9O2YP0
ある日、いつものレッスン終わりにプロデューサーは輝子を呼び出した。
「なんだ?親友……」
プロデューサーに促され、向かいの席に座る。
彼はとても苦しそうな顔をしていた。
だが、普段通り「輝子」と普段通り優しく名前を呼ぶ。
「お前がここに来て一緒にやってきて、もう一年経ったな。
最初の頃に比べて、本当に逞しくなった。成長したと思うよ」
「え?」
「お前は本当によく頑張ってる」
彼は優しく笑う。
唐突に褒められ、輝子はむず痒いそうににやける。
「や、やめろよ、親友……フヒヒ」
ぽりぽりと頭を掻く彼女を見て、プロデューサーはどこか寂しそうな顔をした。
「もう、お前はどこでもやっていける」
その言葉に、輝子はなんだか嫌な予感を感じた。
「親友…?」
そして、嫌な予感は的中した。
「この事務所じゃお前の実力は活かせきれない。お前はもっと人気になっていいアイドルだ」
口調は明るく、だけど目元は笑っていない。拳を握りしめ、彼は言った。
「どうだ、もっと大きいプロダクションで輝いてみないか?」
輝子はその言葉に、頭を殴られたような衝撃を受けた。
目の前が歪んで見えた。思わず倒れそうなほど、彼女は動揺した。
別のプロダクションに行く。それはつまり、親友と離れるという事。
「嫌だ」そう言いそうになった。そう言いたかった。それが本音だった。
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