星輝子「真夏みたいに気持ち悪い」
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43: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:21:21.14 ID:Sev9O2YP0
客席で、男性客が何かを叫んでいた。
スタッフに襲われる中、輝子は形だけの抵抗として、マイクを体の中心に抑え込む。
抑え込みながら、男性客の声を聞いた。

彼は。大きく口を開いて、叫んだ。

「なんだよこれ、気持ち悪い!!」 

怒りの籠った言葉だった。
悪意の、敵意の詰まった言葉だった。
がつんと、鈍器で頭を殴られたような感覚になった。

じわりと涙が滲んできた。
何を泣いているんだ。何を被害者面しているんだ。
裏切り者が。皆を裏切って、傷付けておいて。
そう分かっていても、ショックを受け止めきれない。
自分の行動で不快になった人の悪意は、15の少女にとってあまりにも強烈だった。

「キモっ」
「これがあの輝子ちゃん?」
「ありえねー」
「ふざけんなよ!」
「マジ最悪」

男女問わない罵声が絶え間なく彼女に突き刺さる。
失望の顔が、嫌悪の顔が彼女を囲む。
自分のせいで、みんなが不快なった。自分のせいで。自分のせいで。
ぐるぐると回る頭の中、彼女は思う。
なんで、なんで、なんでこうなったんだ。

メタルが好きだった。
キノコが好きだった。

みんなと楽しみたかった。

それだけだったのに。

歯を食いしばる。零れそうな涙を堪え、目を瞑る。

一際大きい男の声が聞こえた。

「帰れ!!」

輝子は強く、強く歯を食いしばった。
嗚咽を堪える事に必死で、ついにスタッフにマイクを奪われてしまった。
輝子はスタッフに腕を掴まれる。
そのまま引き摺られ、連れて行かれる。
その時、その男は続けて叫んだ。

「輝子を離せよ!!」

思わず目を開いた。
その男の顔を見た。
どこかで見たことがある。そのドクロTシャツを着た男の顔を。
その隣にいる、メガネの男を。


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