星輝子「真夏みたいに気持ち悪い」
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36: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:11:49.39 ID:Sev9O2YP0
「輝子」

プロデューサーは呼び掛けると、彼女はまたビクンと小さく跳ねた。

「一つ、思い付きがあるんだ。お前の力がいる」

それを聞くとまた輝子はぎこちなく笑い、口を開く。

「やる、なんでも、やりますよー、フヒヒ」

「輝子」ともう一度彼女の名前を呼んだ。どこか冷たい、突き放すような声だった。
彼女の体が震える。

「これは誰も得しない。誰の役にも立たない。輝子だって、いや、輝子が一番割を食うかもしれないんだ」

プロデューサーは苦い顔をして続ける。

「だから嫌なら断ってくれていい。その上で、聞いてくれ」

彼は輝子に語り掛けた。彼の言う通り、誰も得しない。誰もを不幸にするかもしれない。
そして輝子は場合によっては破滅する。あまりに愚かな提案を。
輝子は驚き目を丸くしたが、しばらくすると落ち着いたように目を細めた。

内容を全て話し終わった後、プロデューサーは尋ねる。

「やってくれるか?さっきも言ったが、断っても……」

そこまで言ったところで輝子は言った。

「やる」

「え?」

即答だった。力なく笑いながら、彼女は言った。

「やりますよー、フヒヒ……」

輝子を見る。彼女はどこも見ていない。虚ろな瞳で、何も、何も。

「輝子……」

彼は呟く。拳を握り、辛そうに。
だが、吐き出しそうになった言葉を飲み込んだ。

「……そうか」

彼は帰り支度をしながら語り掛ける。

「本当に、よく考えてくれ。もう一度言うが、嫌なら断ってもいいんだからな。
自分の事を第一に考えてくれ」

彼女は微かに頷く。

「細かい事は追って連絡する。とりあえず安静にな。帰れそうなら送っていくが……」

「ううん、大丈夫だよ」

輝子は彼が立ち去るのを見つめていた。
そして完全に見えなくなってから自分の胸に手を当て、その提案を思い出す。
彼女の心臓は、バクバクと弾けそうなほど震えていた。


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