29: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:02:58.88 ID:Sev9O2YP0
「やあ、『星輝子』」
ゆっくりと輝子の隣まで歩くと、彼女の顔を覗き込んだ。
輝子は横を見ない。見れない。
暑くて、怠くて、顔を動かせない。
怖くて、恐くて、『それ』が見れない。
「アイドルは順調みたいだなあ」
どこかで、いや、いつも聞く声をしていた。
誰よりも嫌いで、誰よりも気持ち悪い声だった。
「人間のトモダチもできたんだな、何よりだ」
輝子は、ガタガタと身体を震わせていた。
暑くて暑くて気持ち悪いのに、震えが止まらなかった。
「じゃあ」
その声が、その言葉の続きが恐かった。
何を言われるのか、検討がついていた。
「もう、キノコもメタルもいらないな」
その言葉が聞こえた時、彼女は思わず横を向いた。
「違う、そんな訳がない」「キノコもメタルも、大事なトモダチだ」
「お前なんかに何が分かる」
そう言う為に、歯を食いしばり、隣にいる『それ』の顔を見た。
「ん?違うのか?」
『それ』は、輝子と全く同じ顔をしていた。
ただし、左目にはピンクのペイントが施されていた。
マッシュアップ★ボルテージ。彼女が前のプロダクションにいた時に着ていた衣装だった。
『それ』の顔を見た途端、輝子は何も言えないどころか、
睨むことすらできず、ただ、『それ』を見つめるしかなかった。
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