28: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 01:00:54.85 ID:Sev9O2YP0
ふらふらと、一人歩いた彼女は公園にたどり着いた。
ちらりと中を覗いたが誰もいない。
彼女は足を踏み入れ、ベンチに腰を下ろした。
ベンチは木陰になっていたが、それでもとてつもなく暑い。
むしろ木のそばにいる事で、蝉の鳴き声がいっそう近くで鼓膜を震わせた。
彼女は項垂れ、だくだくと汗を垂れ流す。
ハンカチなどは持っていない。手や服で拭ってもきりがない。
汗でひっついた服が気持ち悪い。風で気化した汗が熱を奪い、
暑いのに寒いのが気持ち悪い。頭が痛くて気持ち悪い。
足のそばに転がる百足の死骸が気持ち悪い。
ぐるぐると思考を巡らせていると、ふと、声が聞こえた。
彼女は俯いたまま、視線を上に向ける。
人影はない。誰かがいる気配もない。
いやに重い頭をゆっくりと持ち上げ、前を見たがやはり誰もいない。
ただ、陽炎がゆらゆらと揺れているだけだった。
「気持ち悪いのはお前だろう」
やはり声が聞こえる。
暑さで頭が回らない。ぼーっと、静かに揺れる陽炎を眺める。
彼女はゆっくりとまばたきをした。
そして、目を開いた時、陽炎には色が付いていた。
もう一度まばたきをすると、人の形を取っていた。
陽炎は、彼女の方に歩いてきた。
陽炎は、赤く、黒い、奇抜だが、どこかで見た事がある格好をしていた。
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