1: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:09:08.61 ID:bb4C09gAo
・地の文、一人称
・ライラさんのパパさんの話
・設定はほぼ捏造
よろしければお付き合いください
↓一応同じ世界線の話
【モバマス】千夜の姫に宿る炎
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2: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:11:54.80 ID:bb4C09gAo
就寝前の一時間ほど、書斎に篭もってアルバムを眺める。
それがここ最近の日課になっている。
過去に浸るほど年老いたわけではない。
ただこうするより他に術を知らないだけだ。
3: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:12:34.43 ID:bb4C09gAo
アルバムには十六年という時間が綴じられている。
その時間は、ある日を境に止まってしまった。
その事実にどうやって向き合えば良いのか。
4: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:13:14.05 ID:bb4C09gAo
***************************
そんな事になるなどと、その瞬間まで考えもしなかった。
5: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:13:55.07 ID:bb4C09gAo
「ライラはどうした?」
出迎えと言っても大仰なものではない。
誰かがいなければすぐに気がつく。
6: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:14:42.13 ID:bb4C09gAo
「そのことでお話があります」
穏やかな声にはしっかりとした芯が通っている。
その響きだけで、先ほどの想像が無用の心配だと理解できた。
7: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:15:13.92 ID:bb4C09gAo
――――――
――――
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8: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:15:55.37 ID:bb4C09gAo
まずは落ち着かなければいけない。
吸う息で鼓動を鎮め、吐く息で雑念を払う。
ゆっくりと繰り返す内に、思考がクリアになっていく。
9: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:16:26.02 ID:bb4C09gAo
十分な経済力があり、家柄も申し分ない。
そして当然、本人の資質にも太鼓判が押せる。
海千山千の者どもと渡り合ってきた私の眼鏡に狂いはない。
この男ならばと、そう自信を持って言える相手なのだ。
10: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:17:11.59 ID:bb4C09gAo
「あなたは最近、ライラと二人で話をしましたか?」
動揺も後ろめたさもない、柔らかな声だった。
声音には私への理解さえも含まれている。
11: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:17:46.95 ID:bb4C09gAo
問いかけが針になって刺さる。
私が話をしている時、ライラはどうしていた?
ライラの目には何が映っていた?
12: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:18:37.02 ID:bb4C09gAo
確かに私たちの時と比べれば違いはある。
まず、ライラとその相手には面識がない。
だがそれは、私たちのケースが珍しいだけだろう。
今回の話が世間一般から逸脱しているわけではない。
13: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:19:32.12 ID:bb4C09gAo
「……ライラは違うというのか?」
「あの子は周りの幸せを自分の幸せにできる子です」
14: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:11.85 ID:bb4C09gAo
私とて、喜捨はしている。
だがそれは、持てる者の義務としてだ。
そして、喜捨によって得られる有形無形の利の為だ
世に生きる人間など、大抵はその程度だろう。
15: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:48.06 ID:bb4C09gAo
「ええ、それは私にも分かっています」
だかそれは致命的なリスクでもある。
悲しいかな、世界はそれほど優しくできてはいない。
16: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:21:33.19 ID:bb4C09gAo
「最近のあなたが結婚の話しかしないと、あの子が寂しがっていたのです」
鈍器で殴られたような衝撃だった。
ライラがそんな事を?
17: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:23.82 ID:bb4C09gAo
私の望みを叶えて幸せになる。
それがライラの考えだったに違いない。
けれどそれは、本心からの願いだったのか。
そうではないから寂しさを感じたのではないのか。
18: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:55.94 ID:bb4C09gAo
「……ライラ自身に、か」
そんな当たり前の事を見落としていたのか。
いや、それだけではない。
19: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:23:57.34 ID:bb4C09gAo
「外に出て、いろいろな経験をして。それはあの子を成長させてくれます」
そして妻はそんな私を見放さずにいてくれた。
あまつさえ、私自身が省みる機会すら用意してくれた。
20: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:24:27.33 ID:bb4C09gAo
何やら風向きが変わってきた。
それもおそらく、私にとって都合が悪い方に。
「だってあなた、すぐに手も口も出すんですもの」
21: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:25:06.09 ID:bb4C09gAo
「あの子の事となると、途端にブレーキが壊れるんですから」
向けられた苦笑には思い当たる節がある。
いや、ありすぎるくらいか。
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