28: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:59:15.22 ID:nm7zvJuf0
「え?」
「夢を、こわしちゃったかな? まつりちゃんのファンなのに」
「そんなことないよ。前にも言ったけど、僕だってまつり姫が本当のお姫様だって思ってたわけじゃないから」
そう、それは本当だ。彼はアイドル徳川まつりのファンで、彼女のお姫様のようなところが好きだ。
しかしまあ、だからと言ってそんなつましい努力をしてお姫様みたいになったとは思っていなかったが。
「あんまり好きじゃない甘いものとか無理して食べたりしてるの見てると、なんだか……私がまつりちゃんのことお姫様になったら嬉しいとか言っちゃったせいかと思って……」
彼にもようやくわかった。
「それで僕に聞いたんだ。お姉さんがアイドルってどんなかとか、やめて欲しいって思わないのか、って」
「最初はね」
ちょっと笑うと、徳川さんはまた赤くなった。
最初は? じゃあ今は?
「ともかく私は、似た環境にある人を他に知らなかったから。それで……うん、高山君が高山紗代子の弟だって効いたから」
彼にとって、今となってはなにがきっかけでも良かった。
いや、そのきっかけに彼は感謝している。
徳川さんと知り合いになれたことは、嬉しいことだった。
そして彼は、徳川さんを楽にしてあげたかった。
「じゃあ似た環境にある僕から言えることは、ひとつだけ」
きょとんとした顔で、徳川さんは彼を見る。
「姉ちゃんはきっと、あの子との約束がなくてもきっとアイドルを目指したんじゃないかって僕は思う」
「え、だってその子との約束が、アイドルになりたい動機じゃなかったの?」
徳川さんの疑問はもっともだ。高山少年も頷くが、しかしそれでも言う。
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