36: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:16:35.34 ID:sRuakiC/0
そこからの3週間近く、私は悶々とした思いで過ごすことになった。
歌織さんは、本当にその日にすべてを決めてしまうのだろうか。
そもそも2人でどこに行き、なにをするのだろうか。
そうしたことが千々に頭を巡り、私の胸を痛める。
37: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:17:32.68 ID:sRuakiC/0
このみ「早く寝れば、早く起きられるの? 歌織ちゃんは」
歌織「それは……そうでもないんですけど、やらないよりは……と」
莉緒「睡眠は量よりも質、って聞いたことがあるんだけど」
38: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:18:24.15 ID:sRuakiC/0
歌織「今、寝起きの私は子供っぽいって思って笑ったでしょ?」
風花「そ、そんなことは……」
歌織「違うの?」
39: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:21:36.09 ID:sRuakiC/0
このみ「そうね。そうすると風花ちゃんは、結果はともかくまあまあの選択だったわよね」
風花「え?」
莉緒「映画だったのよね? 2人並んで座って同じ時を共有……周りは暗いしあまり気にされない。なるほど、理想的かも知れないわね!」
40: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:22:32.77 ID:sRuakiC/0
このみ「それは……どうなのかしらね。プロデューサー気後れとかしないかしら」
歌織「まあ、そういうものなんですか?」
莉緒「左ハンドルでしょ? プロデューサーくん、運転とかしたことなさそうだから、歌織ちゃんばっかり運転することになるんじゃない?」
41: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:23:30.60 ID:sRuakiC/0
歌織さんはライバルだし、明日は彼女のターンなわけだが敵愾心というものを不思議なぐらい、私は持てないでいる。
こうして大人組のみんなで集まって飲みながら、わいわいと話すのはやはり楽しいし、女同士の友情も感じる。
そう、私もわかった。
この恋に敗れるなら、プロデューサーさんが誰かを選ぶなら、たとえそれが自分でなくてもこの中の誰かであって欲しい。
42: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:24:31.30 ID:sRuakiC/0
実は私は最近ほとんど毎日、このパラノーマル・アクティビティを再生している。
その意味では買って良かったDVDだが、実はいつもこのシーンしか見ていない。
このシーンにさしかかると、あの時……プロデューサーさんが私の手を握ってくれた事が、あの手の感触と気持ちが、私の中に鮮明に蘇る。
それで、日課のように私は毎日このDVDを再生しているのだ。このシーンだけを。
43: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:25:12.46 ID:sRuakiC/0
莉緒「意外よね。風花ちゃんがホラー映画なんて」
風花「ま、まあ、心境の変化というか」
歌織「……プロデューサーさんと見に行った映画なんでしょう?」
44: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:25:55.16 ID:sRuakiC/0
翌日の私の仕事ぶりは、お世辞にも誉められものではなかった。
プロデューサーさんの代わりに来てくださった社長さんの熟練のフォローでなんとか事なきを得たが、申し訳なさに私は社長さんやスタッフの方々に頭を下げて回った。
無論それは、歌織さんとプロデューサーさんのデートがどうなっているのかが気になって仕方がなかったからだ。
でも、先にあった私のターンでは歌織さんもやはり同じ思いをしたであろうし、歌織さんはきちんと仕事もこなしている。
45: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 14:27:05.11 ID:sRuakiC/0
このみ「まあ気持ちはわかるわよ」
このみさんはポンと私の頭に手をおいてくれる。
優しい、なぐさめの手の温かさだ。
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