283:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:30:45.51 ID:XVB8s0iW0
その怒りは、ある種の「信頼」の裏返しでもあった。
人間的な友情や親近感は一切なくとも、
アルゴサクス・アビゲイルに対抗するために協力し、
共に耐え忍んだゆえの悪魔なりの仲間意識、
スパーダの妥協なき「破壊」の探求姿勢も評価し、
その生き様にはムンドゥスなりに共感も抱いていた。
そしてロキの件でスパーダにだけは助力を求めたように、
魔帝は打算的ながらも「信頼」とも呼べる姿勢を向けていたのである。
だからこそ、スパーダの裏切りにだけは
魔帝は真に「怒り」を抱いた。
「魔界を捨てた」「人間側に組した」なんて事柄は
今はもう本質的にはどうでもよかった。
生涯で唯一、ただ一人認めていた者が裏切った、
ゆえに他のすべてを忘れさせるほどに魔帝を憤怒させた。
一方でスパーダにとっては、その魔帝の怒りすらも心を痛めるものだった。
悪魔としてのスパーダにとっても、
魔帝こそがもっとも己に近き存在だったからである。
そして皮肉なことに、人の心を有している今だからこそ
スパーダはその関係にある種の情すら抱いてしまっていた。
それゆえに裏切られた魔帝の怒りは当然と思えてしまい、
負い目すらも抱いていたのである。
しかしその心痛がスパーダの闘志を鈍らせることはなかった。
むしろそのような「人の心」があるからこそ、
人間界を守るという信念、
そして打倒魔帝の決意はやはり揺らがなかった。
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