133:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 01:20:34.67 ID:XVB8s0iW0
ミカエルは竜王を恐れていたが、その歩みに迷いはなかった。
なぜなら、それほどまでに恐るべき存在だからこそ、
倒さねばならないと使命感をより強めたからである。
竜王と相対するや、彼はいつも通りの蛮勇を演じ、
全力をもって一騎打ちを仕掛けた。
喰われる予定でありながらあえて戦うのは、
竜王の食欲をより促進させるためだった。
絶望、失意、困惑、それらに染まった魂を竜王は特に好んだため、
ミカエルもあえて全力で戦い、
それらを備える「心折れた敗者」という役を演じようとしたのである。
彼はその役を全うした。
ミカエルは良き戦いを演じながらも敗れ、最期に喰らわれた。
無念の敗北、非業の死。
それら演出は目論み通りに醸成され、
誘われた竜王は疑うことなくミカエルの魂を味わおうとした。
その貪欲ゆえの無用心こそが、ミカエルにとっての勝機だった。
「胃袋」に取り込まれて分解されたミカエルの魂は、
竜王の最深部まで落ちこむや「剣」となり
無防備な内側から悪竜の精神を貫き、
竜王にとっての「毒物」となる善意を打ちこんだ。
そして悪竜の精神が崩壊した。
竜王とミカエルの精神は共に砕け、その魂は無秩序に混ざり合い、
彼らは共に自我を喪失したのである。
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