120:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 01:14:27.36 ID:XVB8s0iW0
こうして負の感情に傾いていった混沌神族の中から、
ついに行動を起こした存在が現れた。
彼は「混沌の使徒」、あるいは「竜王」と呼ばれていた。
「混沌の使徒」という名は、長子たる混沌神族の中でもっとも早く生まれ、
そしてもっとも力があったことから、
エーシルによって直接授けられたものである。
とはいえこの名は常用するには大袈裟だと、
また善良だった頃の彼自身はこの名を嫌ったため、
人間が成熟したこの時代には使われなくなっていた。
そして代わりに用いられたのが、
彼の姿形に由来する「竜王」の名だった。
この竜王は本来、エーシルの意志を受け継いだ高潔な神であり
混沌神族を束ねる首長として君臨していた。
くわえてエーシルから、「魂の苗床」の統括者たる役目、
そしてそれに相応しき力も与えられていた。
それはいわば人間界の「心臓」たるものだった。
苗床から生じた魂はすべて竜王に送られ、
そこではじめて生命の鼓動を与えられ、現世へと送り出された。
また一方で死した魂もすべて一度彼のもとに集められ、
清められたのちに苗床に還され、新たなる魂の糧となった。
人間界の血を巡らせる「心臓」、
彼こそが人間界の生命の鼓動を司る存在であった。
竜王は誕生以来、この大いなる役割を用い、
「苗床」統括者としての役目をこなしていった。
ひたすら真摯に、高潔なる長子の長として、
厳格かつ善良なる施政者として。
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