【ポケモン】あなたと過ごす最後の日【LEGENDSアルセウス】
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4:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:07:37.26 ID:tgweQ+Xjo
その日の空は綺麗に澄み渡っていて、輝く満月と星々が海の水面にまで反射して浮かぶ、とても美しい夜だった。

誘いを受けた側ではあるが、カイは夕方頃にもう浜に着いて、赤い陽が沈む様子を背に感じながら、ショウが来るのをずっと待っていた。グレイシアと共に砂の手の先に腰を下ろし、夜が更けるのを静かに待った。

グレイシアの耳がぴくりと動く。後ろの方で、砂浜を歩く足音が聞こえる。カイは、ゆっくりと振り向いた。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:08:17.02 ID:tgweQ+Xjo
「調査だったら、門番さんたちに行き先を教えないとでしょ? 今日は遊びにきただけだし、誰にも知られたくなかったから……内緒で出てきたんです」

「そ……そうなんだ。でも、どうして今日はその子だけ……?」

「……ははっ。自分なりに整理つけて、きちんとお別れしたつもりなんだけど……この子だけはあたしのことが心配みたいで、ずっとついてきてくれてるの。困ったなぁ」
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:08:49.59 ID:tgweQ+Xjo
渚に腰を下ろし、ぴちゃぴちゃと海水に手を濡らしている。こうしてみると、やはりこの子は年相応の女の子なんだと実感する。そんなショウを、レントラーは離れた位置に座って見守り続けていた。カイはその目に、あのムクホークと同じ雰囲気を感じた。


「……本当に、みんな逃がしちゃったの?」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:09:58.44 ID:tgweQ+Xjo
……ショウの親。ショウの家族。

ショウはこれまで、自分が「元いた世界」のことを、カイに対してさえあまり話してこなかった。否、誰にも話してこなかった。

とくに「親」の話は、幼いころに親を亡くして顔も覚えていないというカイに遠慮して、半ば禁句のように扱っていたほどだ。カイもショウが遠慮していることには薄々気づいていた。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:10:47.63 ID:tgweQ+Xjo
「シンオウさま……アルセウスと神殿でお別れしたときに、言われたんです。『どちらに居たいか』って」

「!」

「そのときは、何も答えられませんでした。元の世界に戻るなんて、もう二度とできないことだと思ってたから」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:11:35.04 ID:tgweQ+Xjo
「あたしは確かに、自分から望んで『元の世界』を去りました。まさか自分が時空の裂け目に飲み込まれるなんて思ってなかったけど、確かに望んでこの世界に来たんです」

「……」

「あたしがもといた世界では……あたしなんて、特別でもなんでもない、ただの女の子でした。人より優れたところなんて何もなくて、友達もいなくて……つらい思いや寂しい思いもたくさんしました。どうしてこんな世界に生まれてきたんだろうって、いつも思ってた気がします」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:12:42.47 ID:tgweQ+Xjo
「……本当に……帰っちゃうの」

「……」

「そんなの、わたし信じられない……嫌だよ……」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:13:34.85 ID:tgweQ+Xjo
「ショウさんは……わたし以外の誰かに、相談したの?」

「……」

「い、いいんだよ、言っても。怒ったりしないから」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:14:22.95 ID:tgweQ+Xjo
核心に触れる質問に、ショウはしばらく答えなかった。

寄せては返す波の音だけがふたりを包む。

カイは、腕の中にいる少女が、自分を傷つけてしまうことを恐れて何も言えないのだということも十分理解していた。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/17(木) 13:15:40.28 ID:tgweQ+Xjo
見たこともない世界。自分の常識が通じない時代。

はじまりの浜に落ち、あれよあれよと調査隊に入ることが決まってしまったそのときからずっと、ショウには元の世界のことが引っ掛かっていた。

家族を残してきたことへの後悔。もう元の世界に戻れないのではないかという不安。孤独感にさいなまれ、満足に眠ることもできなかったいくつもの夜。
以下略 AAS



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