ドラ「のび太くんが」のび「ドラえもんが」「「消えた!!?」」
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16: ◆86inwKqtElvs[saga]
2022/02/10(木) 21:41:56.54 ID:7TpWqrtf0
「キミたちは何の活動をしてるの? 人を傷つけてるの?」

「ドラえもん、僕がそんなことをすると思う?」

「しない、けど、タイムパトロールはそう思ってる……」

 なにせ、時空テロ組織とまで言われているのだ。

「組織ってほどじゃないよ。ここにいるのは僕と出木杉くん。あと僕達のほかにも滅んだ支流で辛うじて助かった人たちを救助したりしてそのまま僕達のメンバーになったり。でもそれも二十人ほどかな」

「あと、アルトちゃん。出木杉くんが発明したロボットだよ。可愛いでしょ」

 アルト、と呼ばれた銀髪の女の子がぺこりと頭を下げる。ドラえもんよりも表情が乏しく、いかにもコンピューター的だが、それでも身の回りを助けるロボットとしては十分優秀なのは、同じロボットだからわかった。

「僕達の活動は、時空乱流に巻き込まれたり滅んだ時間でも辛うじて生き延びた人を救出すること。あと、タイムトラベラーのタイムマシンにクラッキングをかけて、本来の時間に帰らせること」

「それは……時空航法違反だよね」

 現代で例えるなら、車の運転を無理矢理に止めてUターンさせるようなものだ。

「でも、傷付けたり、人の命を奪うようなことはしてないよ」

 それだけは信じて、とのび太の目が訴えてくる。

 どんな時代でどんな場所にいようと、のび太がそんなことするわけない。だからドラえもんは、のび太を信じた。

「ボク達の時間でも、時空の支流っていうのは仮説としてはあるんだ。発見されてはいないけどね」

「そうなんだ。じつはさ、このあたりは出木杉くんの発想なんだ」

「だろうね。のび太くんがそんなこと思いつきっこない」

 壁に向かって胡坐をかいて無言を決め込んでしまった。

「ごめんごめん。でも、のび太くんがリーダーか」

「タイムパトロールにはそんなふうに思われていたんだね。確かに、何回か追いかけられて生きている支流に逃げたりしたことはあったけど」

「それが原因じゃないかなあ」

「でも、やめるつもりはないよ。ドラえもんと会えなくても、僕達の世界でもドラえもんは生まれてほしいから」

 真剣な、大人びた表情に、やっぱりこののび太はいろいろ選んできた大人ののび太なんだと、ドラえもんは思った。

「こっちの、ボクたちののび太くんは?」

「寝てる。疲れちゃって。ショック受けたみたい。仕方ないよね。僕ならショック受けるもん」

「そりゃ同じのび太だからね」

「…………」

「…………」

「キミは、ボクに未来に帰ってほしいの?」

「ボクがやってきてからの、ボクとの全部思い出、失くしていいの?」

「そうしたら、キミの世界は、元に戻るの?」

「わからない」

 ドラえもんの切実な問いに、のび太は真摯に答える。

「時の支流は、ちょっとしたことで簡単に滅びるんだ。この活動を始めてから、たくさん見てきたよ」

「出木杉くんが言ってた。タイムトラベルが禁止になって、過去への干渉が全部なくなったとしても、滅んだ支流が元通りになることは、殆どないんだって」

「でももしかしたら、て。帰る場所、なくなっちゃったし、ちょっとでも可能性があるなら、って」

「でもそれには、子供の僕の記憶をね、失くさなきゃいけないよって言われたんだ」

「全部なかったことにしないといけないって、そうしないと可能性がもっと低くなっちゃうからって」

「その時は、それでもいいと思ったんだ」

「でも、ドラえもんともう一度会ったら」

 眼鏡の奥から、涙が溢れた。

「やっぱり、忘れたくないよ……」

 膝を抱えて、涙を隠す姿は、子供の時のままで。

 だからドラえもんは、それ以上何も言えない。


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