ドラ「のび太くんが」のび「ドラえもんが」「「消えた!!?」」
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◆86inwKqtElvs
[saga]
2022/02/10(木) 21:38:02.54 ID:7TpWqrtf0
「でもそれは、本流だけしか見てないからなんだ」
大人ののび太は、寂しそうに笑う。
「僕も出木杉くんもね、今のキミから見るなら、支流にいた人間なんだ」
「ドラえもんの未来では、時間軸は一本だけだと思っているけど、本当は細かい支流がいくつも生まれては消えてるんだ」
「僕達の世界は、時空はね。本流だと全然平気な小さな波で、全部洗い流されたんだ」
ホログラムには、のび太の家が、世界が、地球が、宇宙が、様々ないのちと共に滅び、無になっていく様子が映し出される。
「パパもママも、静香ちゃんも、……みんな、全部、世界の全てが」
のび太は、あまりに理不尽な話に、泣いていた。嘘だとすら思った。
「ドラえもんを未来に返せば、過去に干渉する未来人を全部元に戻せば、僕達の世界は元通りになるかもしれない」
「パパやママや静香ちゃんに、もう一度会えるかもしれない」
「世界が元に戻るかもしれない」
「僕達はそれを信じて、未来人が過去に干渉すること全てを止めようって運動をしているんだ」
「ねえ、ボク……」
「ドラえもんのこと、忘れてくれないかな」
「いやだああ!!」
のび太は泣き叫ぶ。
「ドラえもんが世界を滅ぼしたなんて嘘だ嘘だ嘘だ! ドラえもんが帰らなくても、きっとみんなの世界は元に戻せるよ!!」
「だから、そんなこと言わないでよ!! どうしてそんなこと言うんだよ!!」
ぽかぽかと、小さな拳で大人ののび太の胸板を殴る。大人ののび太はあの寂しそうな笑い方をしたまま、動かない。
「のび太くん」
出木杉が、いつの間にか後ろに立っていた。
「ドラえもんが来たことで行われた改変の事実は、本流に投げ込まれた波紋は、消せない。だけど、最小限にすることは出来る」
「キミたちみんなが、ドラえもんのことを忘れればいい。それだけでいいんだ」
「ドラえもんがいなくても、キミは望む未来にたどり着く力を持っているんだよ」
「嫌だ、嫌だ!! ドラえもんとは絶対別れない!!」
「絶対別れないから!! ねえ、ドラえもんに話そうよ!! ドラえもんならなんとか」
「出来なかったよ」
大人ののび太は、やっぱりさびしそうなままで。
「ドラえもんは、僕達の世界では、生まれる前に、時の流れにのみ込まれたんだ」
「だから、僕達のドラえもんは、もういない」
「僕と出木杉君は、滅びた時、この亜空間にいた。だからドラえもんの思い出も、みんなとの冒険も、覚えてる」
「せめて、生まれてきてほしいんだ。僕達の世界でも」
「僕はね、ドラえもんも、取り戻したいんだよ」
「〜〜〜〜〜〜」
のび太は全部理不尽に聞こえてしまう。
ここに来たのはついさっきの筈なのに、ずいぶん時間が経っているように感じる。
ポケットの中から、たくさんの小銭が、ちゃりんちゃりんと鳴く。
ドラえもんのバースデープレゼントは、まだ買えていない。
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