臥煙伊豆子「おいで。君の意思で、私の隣に」
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6:名無しNIPPER[sage saga]
2022/02/03(木) 23:41:29.46 ID:GA97p571O
「つまらないかい?」

上映して30分で飽きた。古臭い撮り方。ありきたりなストーリー。大昔の名優がメガホンを取り自ら主演したその作品は、数十年前からなんら進歩も発展もなく、古ぼけていた。

「まあ、正直」
「知ってた。じゃあ、もう観なくていいよ。退屈なら私の横顔でも眺めていたまえ」

言われて見やると臥煙さんは真っ直ぐスクリーンを見つめていてプロジェクターの光に浮かんだ青白い横顔は映画より魅力的だった。

「退屈しのぎにお喋りでもしようか」
「上映中の私語は……」
「それは君の意思かい?」

なんども同じ忠告されるのはルールを破ることよりも僕にとって嫌だった。耳を傾ける。

「実は私はこの映画の結末を知っている」
「知ってて観るんですか?」
「そうとも。何でも知ってるお姉さんの私はこの映画に限らず、あらゆることが退屈だ」

言われて悟る。何でも知っている、弊害を。

「知ることが嫌にならないんですか?」
「ならない。知りたいと思うことで知的であり続けられる。知的好奇心を失えば、AI以下になってしまう。知的生命体の矜持なのさ」
「AI以上の人間のほうが少ないでしょう」
「何を以て以上か以下かによる。集積する情報量においては敵わないかも知れないが、あらゆることに興味を持つ人間は電子頭脳を凌駕している。良い意味でも悪い意味でもね」

自制するための理性を臥煙さんは取り除く。


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