トレーナー「ひたいに油性ペン(極太)で“オグリ”と書かれた」
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6: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2022/01/09(日) 06:38:05.04 ID:7TLsjr9y0
「どうだ」

 短いが自信の溢れた言葉、揺れる尻尾。
 彼女から伸びた影が、俺の影と重なっている。

「うん、やはりキミは私のモノだ」

「……ああ、俺は君のモノだ」

 ただ影を重ね合わせただけ。そんな子ども染みた遊びで頬をほころばせる彼女に、なぜか負けたような気がして両手を上げる。

 実際俺は負けているんだろう。彼女が幸せそうにしてくれるのなら、彼女が調子よくターフを駆け巡ってくれるのなら、今のようにくだらない事で振り回されても苦痛ではないんだから。
 そしてこんな日常が、いつまでも続いて欲しいと望む。
 ならば俺は彼女にいらないと言われるその日まで、俺は彼女の――

「あっ、オグリとトレーナー。そないなとこで突っ立ってどないしたんや?」

「あ」

「あ」

「ん?」

 強い日差しを背中にやって来たからか、はたまた俺とオグリが見つめ合ってたからか。別に足音を殺していたわけでもないタマモクロスの接近に、俺たちは二人そろって気がつけなかった。

 タマモクロスの影が、俺の影と重なっている。

「お、オグリ……?」

「……」

 声をかけても彼女は応じない。
 呆然と小さく口をあけ、わななきながら俺の影を見つめている。

「え、なんや? ウチがなんかやってもうたか?」

「……」

 タマモクロスが慌てても、彼女は応じ――いや。

「……取られた」

「なんやて?」

 オグリは小さな声で呟いてから、今度はハッキリとした声で――

「タマにトレーナーを取られてしまった」

「ぶふぅっ」

「はあっ!?」


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