トレーナー「ひたいに油性ペン(極太)で“オグリ”と書かれた」
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◆SbXzuGhlwpak
[sage]
2022/01/09(日) 06:37:14.05 ID:7TLsjr9y0
※ ※ ※
「なあ、オグリ……どうしたんだ?」
「……」
オグリからの反応は無い。耳がピクリともしない事から、無視したわけではなく集中するあまり聞こえていないのだろう。
グラウンドへと向かう途中の事。
ひたいに書かれた“オグリ”もだいぶ薄まってきた。
いつもなら隣に並んで向かうのに、オグリは今日に限って斜め後ろをついて歩く。それも俯きながらだ。
「体調でも悪いのか?」
振り返りながら立ち止まる。一緒に立ち止まったオグリは、ここでようやく顔を上げてくれた。
「ん……? いや、そういうわけではない。心配をかけてしまってすまない」
「体調に問題が無いのならいいんだけど……どうした、下を見ながら歩いたりして」
「影の確認をしていた」
「影?」
そう聞いて先ほどまでのオグリのように俺も俯く。強い日差しによってハッキリとした影法師がそこにはあった。
「ヨネさんに言われたんだ」
「今度はヨネさんか。いったい何を?」
シゲさん、トメさんと来て今度はヨネさんだ。今度は何だろうとつい身構えてしまう。
「“他の女の影が無いか気をつけなさい”と。だからキミの影をずっと見ていた」
「……あ、うん。今度はそう来たか」
「?」
最初シゲさんがしっかりと俺をモノにするように言い、オグリはそれにトレーナーをモノにしたと連絡した。
それを聞いたトメさんがまだ子どもなんだから“ヒニン”はするようにと言い、オグリはそれにピュアな関係だから大丈夫だと連絡した。
ここでピュアな関係でちゃんとモノにできているのかと不安になったのがヨネさんなんだろう。
「影をじっと見ているうちに、小さい頃にしていた影踏み鬼を思い出した。色んな形に変わっていく影を踏みながら走り回るのは楽しくて、それを思い出しているうちにキミの影に夢中になってしまった」
「そうだったのか。でもこれで他の女の影が無いってわかってくれたか?」
「うん。君に他の女の影は無い。これからも他の女の影が、キミの影と重ならないように気をつけてくれ」
女の影ってそういう直接的な意味だったのか……。
いやまあ、影が重なるほど近くにいるという意味ではあながち間違いじゃないんだろうけど、ここはトレセン学園というウマ娘ばかりが在籍する場所だ。普通に歩くだけで女の子に影を踏まれてしまうのだけど、それをどう気をつけろと?
などと考えていると――
「……オグリ?」
無言でオグリが歩き始める。並んで歩こうとする俺を手で制すると、オグリは少し進んだところで立ち止まって振り返った。
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