【ミリマスSS】あわてんぼうのサンタクロース【箱崎星梨花、三浦あずさ】
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8: ◆p1Hb2U6W8I[sage saga]
2021/12/24(金) 21:46:36.85 ID:J1wXT9tF0
「あの子にとっては、今はまだ気持ちの整理をつける時間が必要なんです。なのに、無闇に干渉して、却って悲しい思いをさせてしまって。まだまだ大人になりきれていませんね、私も」

紡がれるその言葉には、微かな震えが伴っている。

「私には、もうどうすることも出来ないって、解っていますから。時間が解決してくれるのを黙って見守って・・・」

「そんなわけないだろ」

徐々に震えを増していくその肩が見ていられなくて、両手でしっかりと抑え込む。
その揺動で、あずささんの眼から雫が一筋垂れていった。

「諦めがついたんだったら、そんな泣き出しそうな顔するわけないだろ」

傘を持つ手をあずささんの肩に当てているせいで傘が大きく傾いて、冷たい冬の雨が首筋を濡らす。
雨は徐々に弱まりつつあった。

「・・・あずささん。本当はどうしたいんですか?」

「私は・・・」

あずささんの瞳が映すのは、動揺、困惑、それと不安。
それでも、俺の目を真っすぐと見つめていた。

「本当は、あの子のために何かをしてあげたいんです・・・でも、どうしたらいいか分からなくて」

絞り出されたその声は、すぐ近くにいる俺でなけなれば聞き取れないほど弱々しくて。
肩を抱くその手にグッと力を込める。

「・・・俺、あずささんを信じていますから」

その言葉は自然と零れてきた。

「確かにあずささんは迷子になることが多いですが、その目的地はいつも暖かくて優しい場所だって、俺は誰よりも知っていますから」

誰よりも温かくて、優しいあずささんだから。
この人が望むことが、不幸に繋がることなんてありえない。
めちゃくちゃな論理だって自分でも解っているが、俺は心からそう信じていた。

「プロデューサーさん・・・」

「だから」

気付くと、雨はすっかり上がっていた。

「今回も、一緒に迷わせてください!」

傘を投げ出してあずささんの右手を引っ張ると、雲の間から顔を覗かせた太陽があずささんの驚く顔を照らし出す。

「・・・・・・うふふ♪」

しばしの逡巡の後、浮かんできたのは俺の大好きな笑顔で。

「プロデューサーさんは、いつも私の手を引っ張ってくれるんですね」

「まあ、俺にはそれだけしか出来ませんから」

おっちょこちょいで皆にいつも迷惑をかけている俺だけど、アイドルの皆を信じることにかけては誰にも負けない。
それだけは自信を持って言うことが出来る。


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