【ミリマスSS】あわてんぼうのサンタクロース【箱崎星梨花、三浦あずさ】
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7: ◆p1Hb2U6W8I[sage saga]
2021/12/24(金) 21:45:56.24 ID:J1wXT9tF0
冬の雨は憂鬱だ。
冷気を含んだ無数の雫は、じっとりとした寒さで肌を包んでいく。

「あっ・・・あずささん、今どこですか?・・・はい、そこなら劇場のすぐ近くですから、すぐ向かいますね」

『すいません・・・』

施設を訪れた日の翌々日。
スピーカーの向こうから聞こえるのは、今の天気に勝るとも劣らない湿っぽい声。
・・・早く迎えに行ってあげないと。
灰色の空に向けて傘を開き、早足で劇場を出る。
大通りに出て、駅の手前の交差点で曲がると、住宅街の中のささやかな公園が見えてくる。
その端っこの方にある東屋で、あずささんが雨をボーッと眺めていた。

「おまたせしました」

「ありがとうございます、プロデューサーさん。いつも、すいません」

こういう時、いつもだったら可愛らしい困ったような笑顔を見せてくれるのだが、今日は泣きそうな表情だった。

「もうすぐレッスンが始まるので行きましょうか・・・あっ」

そこまで言って、失敗に気付く。
傘、一本しか持ってきてねえ・・・

「え、えっと!俺、走って戻りますから、あずささんはこれで・・・!」

「そんな・・・」

目を潤ませながら、ジッと見つめられる。

「いやー、ははは・・・あの、狭いけど、入りますか?」

そう言いながら傘を傾けると、あずささんは俯きながら小さく頷いて、俺の傍らにそっと寄り添った。
ピシャッピシャッと雨水を踏み締める音が二つ重なる。
あずささんの歩調に合わせてゆっくり歩いているからだろうか、いつもより劇場が遠く離れているように感じられた。

「・・・あずささん、何か迷っていますか?」

俺がそう言うと、ほんの数センチ傍を歩くあずささんの体が、一瞬震えるのが見えた。

「あの、私・・・駅から劇場に行こうと思ったんですけど、迷ってしまって・・・」

「いや、そういうことじゃなくて。何か悩んでいそうだな、と思って。あの、施設の男の子のことですか?」

「・・・違いますよ〜」

あずささんが俯いたまま立ち止まってしまったので、雨で濡れさせないために慌てて俺も足を止める。

「あの子のことで、迷ってはいません。もう、解りましたから。私は余計なことをすべきではないって」

顔を上げたあずささんは、笑顔を浮かべる。
無理に形作られたそれが、あまりにも寂しげで、胸の奥がキュッと締め付けられるのを感じた。


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