【ミリマスSS】あわてんぼうのサンタクロース【箱崎星梨花、三浦あずさ】
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6: ◆p1Hb2U6W8I[sage saga]
2021/12/24(金) 21:43:27.98 ID:J1wXT9tF0
次の週末、俺達は再度施設を訪れていた。

「せりかおねーちゃん、おうたうたってー!」

「うたってー!」

「えへへ♪じゃあ、みんなも知ってるあの曲で・・・」

子供達とすっかり仲良くなった星梨花は、今日も皆に囲まれて笑顔を咲かせていた。
そんな輪から外れた部屋の隅で、男の子が一人沈んだ顔で絵本を見つめている。

「その絵本、好きなの?」

「・・・」

そんな男の子に、マリア様もかくやと思わせる笑顔であずささんが話しかける。

「・・・」

男の子は相変わらずニコリとも笑っていなかったが、一瞥をくれるだけだったこの前と違って、あずささんとちゃんと目を合わせてくれていた。

「・・・おねーちゃん、おっぱいおおきいよね」

は、恥ずかしげも無くこういう事を言えるから、子供は強いよな。

「あ、あらあら〜」

あずささんも、顔を赤くして照れていた。
可愛い。

「ぼくのおかあさんも、おっぱいがおおきかったよ」

ここまでずっと無表情だった男の子の表情が、不意に変わり始める。
眉の間に深い皺が生じていて、固く結んだ唇は震えを伴っていた。

「このえほんも・・・おかあさんがかってくれて・・・」

震え混じりでよく聞き取れない言葉とともに、眼からは大粒の雫が溢れ出す。
一度破れた堰は、あっという間に崩壊していく。
その涙には、すぐに悲痛な叫びが伴い出した。
場は一時騒然とする。
慌てて宥める職員さんを、俺はただ見ていることしか出来ない。
不安げな子供達に囲まれて、星梨花もひどく困惑していた。
だが、星梨花よりも今はあずささんだ。

「そんな・・・私、そんなつもりじゃ・・・」

いつもにこやかなあずささんが、目を見開いて放心していた。

「ち、違います!あずささんのせいじゃないですから!」

「でも、私・・・」

うわ言のように呟くあずささんに、俺がかけられたのは空虚な慰めだけで。
来週にはもうクリスマスだというのに、失楽園のような雰囲気が漂っていた。


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