4: ◆zPnN5fOydI
2021/12/23(木) 23:43:33.66 ID:JY2epAOO0
同僚「しかし、そもそも深海棲艦の撃退、終戦自体妙な話ですよね。まあ、妙といったら深海棲艦の出現自体が妙なわけですが。でも、深海棲艦の巣が見つかって、これからそれを目標にした作戦を立てようという時に勝手に巣が消失して、戦争が終わっちゃうって。なんか、私でも知らないような極秘作戦でも行われていたような、そんなものを感じてしまいます。もしくは、元々深海棲艦と軍部は協力関係にあって、それがバレる前に証拠を隠滅したみたいな、そんな陰謀論とか……」
ガタン。と、提督は荒々しく椅子から立ち上がった。同僚を睨みつけながら強い口調で同僚に怒った。
提督「陰謀だとかなんだとか、不愉快だ。私は立場上それについての発言は控える。これは、お前の言っている陰謀を肯定するわけでも否定するわけでもなく、軍部の威厳を守るためだ。戦争は終わった。私たちが終わらせた。文句あるのか?」
同僚はフルフルと首を横に振る。提督はそんな同僚を再度睨みつけて、教官室のドアを蹴って開けて外に出る。そして、先の自分の発言を恥じた。
『私たちが終わらせた』、提督はそう言った。しかし実際には、1人の艦娘によって深海棲艦の巣が破壊され、それが終戦に直結したのだった。歴史にもしはないというが、もしもあの捨て身の奇襲攻撃が無ければ、深海棲艦は対策と研究を重ねて進化し、今でも戦争が続いていたのかもしれない。
提督は誰もいない休憩室に入り、深呼吸をする。『深海棲艦の生き残りがいる』という同僚の台詞を思い出して、背筋がぞっとした。
終戦から15年が経過しようとしていた。10歳前後だった駆逐艦も、今では結婚して子供を授かったものもいる。
もしも朝潮が生きていたら、と提督は考える。他の姉妹は皆生きていて、各々の人生をあるんだ。例えば霞は保育士になった。朝雲、山雲は看護師になった。
朝潮の末路を知っているのは、提督と明石、そして大潮型姉妹しかいない。他の艦娘はすっかり彼女の存在を忘れてしまったし、かつては姉妹ですら朝潮の存在を忘れていた。それは提督が忘れるよう仕向けたというのもあるが、あまりに簡単に姉の存在を忘れる姉妹に、提督は不気味さを感じたこともある。
妖精が提督の肩に乗る。ふわふわと宙を漂うそれに、提督は語り掛けた。
「……もしかして、お前がそうしたのか? 朝潮が望んでいたからか? お前は何なんだ。どうして、お前だけがここにいる。深海棲艦はお前の片割れなのか? それなら、その深海棲艦はどこにいる?」
提督は妖精を睨みつける。妖精はいつもの表情で宙を浮き、時々提督の周りをくるりと一周する。提督は挑発されているように感じて、妖精をぎゅっと掴んだ。
「答えろ! お前は何だ? どうしてここにいる? どうして俺の周りをうろつく。他の奴らが捕まえてもすぐにふっと逃げ出すくせに、どうして俺からは逃げないんだ? お前は何なんだ?」
提督に握り締められて、ぬいぐるみのように妖精の顔と身体が変形した。提督以外の人物が妖精を乱暴に捕まえると、妖精はいつも煙のようにふっと逃げ出してしまう。しかし、提督がどんなに妖精を乱暴にしても、妖精は提督から逃げることはしない。
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