86: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:02:46.50 ID:86/EQe0g0
遅ればせながら、自分もアイドルになりたかったのだと気づいた。
朋花も私が、アイドルになるのを待っているとわかった。
そんな私に……というかうちの店に、またしても私の運命を変える来客があった。
そう、運命はいつも花を求めてやって来るのだ。
87: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:03:21.54 ID:86/EQe0g0
「あの……」
「いらっしゃ……」
来客に挨拶しようとして、私は絶句した。
うちの店はお父さんが「バーベナも店頭に飾れるぞ」と自慢するほどに入り口が高い。
88: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:04:02.36 ID:86/EQe0g0
「えと、ご贈用答ですか?」
「……」
「あの……?」
「……失礼ですが、アイドルにご興味は?」
「はあ?」
89: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:04:43.63 ID:86/EQe0g0
それから半年後――
90: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:05:22.80 ID:86/EQe0g0
「あれ? どこ行くんだよ、朋花」
「もうすぐ本番ですよ、朋花さん」
既にステージ衣装を身にまとった朋花に、永吉昴と七尾百合子が声をかける。
「わかっていますよ〜。ただちょっと、どうしてもステージに上がる前にお目にかかって用事を済ませたい方がおられまして〜」
「誰のことですか?」
91: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:05:57.11 ID:86/EQe0g0
「おーい、凛。なんかお客さん来てるんだってさ」
「765プロの新人アイドルの娘らしいんだけど、知り合い?」
控え室で、ユニット仲間の神谷奈緒と北条加蓮に声をかけられ、笑みを浮かべて立ち上がる。
「来たね。待ってたよ……」
92: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:06:33.34 ID:86/EQe0g0
「口げんかですよ〜」
「口げんかだよ」
「ええええええっっっ!?」×4
93: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:07:19.58 ID:86/EQe0g0
「いや、ほんとに口げんかしてるけど……」
「大丈夫なんでしょうか……」
「うん。けどさ……」
「なんか2人とも……楽しそうじゃない?」
94: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:08:04.00 ID:86/EQe0g0
「自分がアイドルになりたいわけじゃない、とは間違いなくおっしゃいましたよね〜?」
「あー……えっと、そうだっけ?」
「凛さ〜ん!」
2人とも、吹き出しそうになりながら口論を続ける。
「あれだよ。朋花が待ってる寂しいって意味の百人一首、私に送ってくるからそれで」
95: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:08:43.51 ID:86/EQe0g0
「おーい! 朋花ー!」
「そろそろ出番だそうですよ」
「凛、こっちも準備しろってさ」
「早く早く」
96: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 14:09:19.09 ID:86/EQe0g0
その日、ステージではたくさんの花が咲いた。
中でも2輪の違う花は、ひときわ綺麗に咲いていた。
2輪の花は、別々に咲いていたけれど――
お互いの姿を見て、お互いの姿を映しあって、同じ気持ちで咲いていた。
101Res/65.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20