【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ
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37:名無しNIPPER[saga]
2021/12/29(水) 23:38:03.96 ID:PfUYSjUvO

丼には黄金色のスープ。その中を細ストレート麺が、行儀よく漂っている。
さらにその上にはチャーシュー。チャーシューに乗せられた茶色の粒々からは、えもしれぬ刺激的な香りが広がっている。

「やや、美味しそうですね!しかしこれは……何ラーメンなのですか?」

ライスシャワーが、蓮華でスープを掬い、一口飲む。その刹那、ハッしたように目を見開いた。

「これ……コンソメ!?でも、何か違う……複雑で、でもとても深い……」

三田村嬢も、「美味しい!」と言ったまま少し固まった。

「……なんでしょう、これ。天王寺トレーナーの言う通り、塩でも醤油でもない。もちろん味噌でも豚骨でもない……」

店主が微笑みながら彼女に語りかけた。

「うち、『かえし』を使ってないんですよ」

「『かえし』?」

私は頷く。

「ラーメンの味、ひいてはジャンルを決定づけるタレのことですな。塩タレなら塩ラーメン、醤油ベースなら醤油ラーメンになる。それをここでは使っていない」

「えっ、何でですか?」

「それはこのスープにある。極めて複雑かつ深い旨味。このスープの力を生かすには、かえしはむしろ邪魔。……そういうことですな?」

店主が微笑み、私に同意した。

「そこまで理解して頂けると光栄です」

私は寸胴の方を見た。表面は香味野菜で覆われている。

「彼が昔、某大ホテルチェーンの総料理長だったのは説明しましたな。そして彼の専門はフレンチ。スープを取るのにも、その技法は使われている。
ライス君の言った通り、コンソメに近い味わいなのはそこから来ているわけですな。
味の決め手は、スープの出汁を取るのに使われているプロシュート」

「ぷろしゅーと?」

「高級生ハムのことだよ、バクシンオー君。スープをハムで取るのは、高級中華ではよくあることだ。
ただ、そこで使われる金華ハムはあまりに高い。ラーメンで金華ハムを使っているのは、『家元』がスペシャルでやるくらいしか聞いたことがない。
そこでここ『八五』は、プロシュートを使った。それがフレンチに通じる独特のスープを作り上げたわけだよ」

「むむむ……よく分かりませんがとにかくすごいのですね!麺が伸びてしまいますから早く食べましょう!」

「ははは、つい熱が入ってしまったな。バクシンオー君の言う通りだ、頂くとしようか」

私は箸を取り、勢いよく麺を啜る。パツパツとした細麺にスープが絡む。


上品、かつ個性的。どこにもありそうで、しかしどこにもない。
ただ、旨味のみが、喉を通り抜けていく。旨味は筋肉の隅々まで広がり、「飢え」を満たしていく。


……うむ、満足。


「バックシーン!!!」


バクシンオーが大声で叫ぶと同時に、私のワイシャツのボタンが全て弾け飛んだ。





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