71:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:12:03.79 ID:u50g9+A20
かっと、胸が熱くなった。
私は一歩引いて、プロデューサーの電話を待った。
いくつか会話を交わしていくうちに、だんだんとプロデューサーの声は強くなっていく。
「生演奏しろって言ってんじゃないの。音源流すのぐらい出来るでしょ!」
それから何度か電話を交わして、一度電話を離した。
「ねえ奏、分かってる? 出来るのは音源を流すことだけ。専用の舞台演出も衣装もない。つまり、君を覆ってくれるベールはどこにもない」
「ええ、分かってる」
「ありのままだよ。それに、沢山のお客さんたちの前だ。生ってのはゾッとするくらい人々の心に突き刺さる。覆いがない状態で、下手を打てば簡単に見抜かれる」
「ええ、分かってる」
「失敗は君だけじゃない、ライブ全体に影響を与えることになる。それでも、君はやるかい?」
「……ッ」
その言葉に、私は恐怖した。
私の無茶のせいで、全部が台無しになってしまうなんて。
頑張ってきているみんなのことは、私は十分に判っている。
その努力が、私のせいで無に帰してしまうとしたら――
「大丈夫だよ、奏ちゃん!」
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