54:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:32:32.85 ID:u50g9+A20
そこは、暗闇だった。
いくつかの光の粒はあっても、それ以外、なにも光はない。
ざわめきの名残が、反響して真夜中の波のように響いていたが、やがてそれも消え去ってしまう。
私は息をのんでリズムを刻む。
ワン・ツー。
大きく息を吸い込み、音がうなりだす。
たくさんのアイドルの声が重なって、歓声が上がって、そしてスポットライトが私たちのいる舞台を照らす。
ライブの始まりの、全員曲だった。
まるでサウナから出てきたかのようなほてりを覚えながら、舞台袖に下がる。
目の前で煌めいたペンライトのきらめきが、今でも残像として網膜にはりついているみたいだった。
ライブに出るのは初めてではない。
これまでも、何度かライブを行っていた。でもそれらとは規模があまりにも違っていた。
覚悟はしていたつもりだけれど、大舞台の上がここまで違うなんて。
客席も、スポットライトの熱量も、鳴り響くBGMが皮膚を揺らす強さも、なにもかもが想像を超えていた。
自分のように感動している子はほかにもいた。
みんな、どこか夢見心地で。こんなのではいけない。しっかりと自分の役目を思い出さねば――
パンと、大きく手を叩く音。
プロデューサーだった。
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