38:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:02:47.03 ID:u50g9+A20
部屋をノックしてから、覗き込む。
「プロデューサー?」
てっきりプロデューサーは仕事でもしているかと思ったけど、扉に背を向けて立ったまま、マグカップを手にしていた。プロデューサーはコーヒーを飲まない。中身はきっと、甘いココアだ。
「ああ、奏。お疲れ。悪いね、仕事終わりに来てもらって」
「別に、大した手間じゃないわよ。それで要件って」
「これだよ」
プロデューサーは机の上に出してあった書類を私に差し出してきた。表紙には、今度やるライブのタイトル。やっぱりそうだ。予想していた通りの話だった。
「今度のライブに奏、君も出てもらうから、よろしく」
「ふうん、そっ」
「驚きはしないんだ」
「なに、プロデューサー。私に小躍りでもしてほしい?」
私の態度がつまらなかったようだが、それは私も同じ気持ちだ。これを渡すとき、プロデューサーはもったいぶる様子もなく、素っ気なく渡しすぎじゃないか。
それも、深く追求したいところだが、今日は勘弁しておいてあげよう。何もかもが許せるぐらいの効力が、私の手の中の書類にはあった。
私は書類をめくっていく。付箋が張られた場所があって、そこが特に私の関係しているところのようだ。
いくつかの付箋があって、赤い付箋は、出演スケジュールだった。
私が出る日に、目を通していく。
強い喜びは、だんだんと失望の色へと切り替わっていった。
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