37:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:01:14.91 ID:u50g9+A20
その日、事務所についたのは、いつもより遅い時間だった。
学校終わり、そのあとにもラジオに出演していた。
本当ならそれで終わりだったのだけど、ラジオが終わった控え室。スマホを確認すると、そこにプロデューサーから連絡があった。
会って伝えたい話があるから、明日空いている時間はないかと。
プロデューサーは、今事務所に居るという。
私は、今すぐ事務所に向かうといった。プロデューサーが話したいことについては、大方の予想ができたから。
今度、事務所で大きなライブをやる。アイドル同士では、自然と噂にもなっていた。今年はどこで、誰が出演するのか。
このタイミングで会って話したい仕事とは、恐らくそれのことだろう。
別に素っ気ない風に装っていたが、実際は自分でも驚くほど胸が高鳴っていた。
タクシーを捕まえて事務所まで向かう途中、スマホを取り出した。
そういえば、文香は今日は遅くまでレッスンをしていたはずだ。文香と合流できるかもしれない。
私は連絡をしようと思ったが、やめておいた。もしかしたら、文香はもう帰っているかもしれないし、偶然会うのも面白いものだ。もし会えなくても、電話で話せばいい。
事務所についた時には、あたりはすっかり暗くなっていた。
とても天気がいい日だった。雲一つない中、蒼い闇夜を月が街の明かりに負けないほど蠱惑的な輝きを放っていた。
エレベーターでプロデューサーが待つ階につく。部屋に向かう前に、反対側の通路の向こうに、文香の姿が見えた。
いつか、私と文香がダンスを踊った休憩所だ。
私は声をかけようと思ったが、文香の様子がおかしいことに気づいた。
顔をうつむけているせいで長い髪に隠れて文香の表情を見ることはできなかった。フロアに誰かが来たことも気づいていないかのようだ。
話をしたかったけど、プロデューサーを待たせていた。
私のわがままで今日にしてもらったのだ。文香のことが気にかかりながらも、私はプロデューサーの元へ急いだ。
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